シンプルな話 ページ31
「俺なぁ、」
私が目の前で堂々と、さぞ美味しそうに唐揚げをかっ食らっても箸に手を伸ばさなかったロボロが口を開いた。
「今まで何やってきたんやろうね」
言いかけた言葉はそれでない気がする。自嘲的に笑った顔がなんとなく癪だ。
「そら、立派に字書きしてるじゃん」
そういうことではないと思う。分かってる。
「どうするべきやった？俺」
「どうもこうも、ねえ。食欲ないの？」
「…ある」
割と世話焼きな癖に、なかなか扱いが難しい。
地雷踏んだらおしまい。面倒だけど、離れると怖いからって理由でだらだら縁切れないわけじゃない。
あ、思ったより食べるのね。意気消沈していたはずのロボロと目が合って、フフンと鼻で笑ってやる。したら、じっと見つめられて逸らせなくなった。
「Aは俺といて苦しかった？」
「かなりね。ロボロもでしょ、ごめんね」
「俺初めてほんまに好かれたいって思った」
「誰に？」
食器をカタカタと退かして、ベランダと部屋を区切る窓を開けてみた。
夜風が吹き込んでお洒落な感じ。
「お前の他に誰もおらんやん」
後ろからがば、と抱き締められた。
よく分かんないけどなんだか泣けてきた。
「なあ、こんな苦しむんやったらもういっそ」
続きは言っちゃいけない。
夜景をバックにするには似つかわしくないくらいダサい私が、彼に体重を預けた。
こんな下手なやり方しかない。
「もう後悔させないでよ、私ロボロに会えてよかった」
「A」
「心底ね、気持ち悪いくらいずっとね、好きだよ前から。事が拗れる前から、嫌いになったことなんて本当は一回もないよ」
泣かれた。
私だって泣いている。
本当に色んな、魅力的な人と会ったけど、振り切ろうと思ったけど、今一緒にいるのはそういうことだ。
お互い嘘をつきすぎて、なにが本当かなんにも分からなくなった。素のままで愛し合えなくなった。
でもロボロといる時は、私の脳は働き方が違うのだ。
名前を呼ばれると、邪な思いは何も無く、ただうれしいのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さかなしょこじゅん - 葵斗さん» ありがとうございます！！！！！とても嬉しいです、これからもちまちまとお話書くのでまたどこかでお会いしましょう！！！微妙に病的な表現が伝わったようでなによりです！！！！！！ (3月2日 15時) (
レス) id: 2941b15b39 (このIDを非表示/違反報告)
葵斗 - うおおおおおおお!!!完走おめでとうございます！執筆は終わってしまいましたが、これからもふとした時に読ませていただきますのでどうぞよろしくお願いします!!<(_ _)>いやーrbrがいい感じに狂っているのがいいですねぇ！ (2月24日 18時) (レス) id: 6f83c28ab3 (このIDを非表示/違反報告)
さかなしょこじゅん - ゆずごろもさん» ゆずごろもさんありがとうございます！！よかったーー！！！本当に、時間がかかってしまった…！笑 ゆずごろもさんのご期待に添えられたようで本当に安心しております…！！ありがとうございます！！ (12月18日 8時) (レス) id: 2941b15b39 (このIDを非表示/違反報告)
さかなしょこじゅん - でんぱぱんさん» ワぁ嬉しいです！！！滅相もございません。ワタシも精進して参ります、共に頑張りましょう、応援しております！！！ (12月18日 8時) (レス) id: 2941b15b39 (このIDを非表示/違反報告)
ゆずごろも(プロフ) - うわああ！語彙力が低下します！私が求めていた最高級のハッピーエンドでした！大好物でもう今テンションマックスです！ありがとうございます！やっとさ素直になったかいな！っていう親目線を味わいながらしみじみとそしてニマニマと笑 ええはっきり言って最高でした！ (12月18日 2時) (レス) @page34 id: b79b00a0df (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかなしょこじゅん | 作成日時：2023年10月26日 0時
