天使の嘲笑2【rbr】

口実 ページ11

「ほんまに、またすぐどっか行くし、もう来おへん」
「売れっ子は大変だな」
「売れとらんわ、やめてえな」


そうまで言って、どうして私の隣人になったのだろう。
北海道まで来て。

それですぐ引っ越すとか、たまたまこの地に用があったのだろうか。


「そんなに飛び回って忙しいんじゃん」
「会いたかっただけやん…」

はあ、なるほど。
遊び尽くしたこの玩具に、まだ興味があるのか。

ヒトの人生、どこまで狂わす気だ。
ただ私で遊ぶためだけに住所を移してしまうのに、少し狂気を感じた。


「いいよ、住みたいならずっと住んでなよ」
「っお、ええん？」
「でも二度と好きだって言わないで、ロボロの気持ちはわかってるから」
「…わかった、」

ロボロの好きは好きじゃないの。
本当に何を思っているかは、私だけが理解してる。

彼が本当に愛したのはユイさんだけでしょ。
それで別にいいよ、私も。


「しょうゆかしてください」
「本当だったの」
「かいそこねた…何持っとんそれ」
「鈍器、手ー上げろ」
「ひー」

わざわざ醤油を持ってきて押し付ければ、申し訳なさそうに帰っていく。
私を傷つけてる自覚があるんだろうな、それでいてこの状況を楽しんでる。
アクマみたい。

ロボロは前から情緒がおかしいな、とは感じていた。


売れっ子になって、さっさとでっかい家に引っ越しちゃえばいい。それで好きな人をみつけて、幸せになればいいんだ、アイツなんか。

傍観者にさえなれない私はどうなろうと、その気持ちだけは揺れなかった。




翌日、またロボロは調味料を借りに来た。
多分ウソだと思う。

さんざん遊ばれて、それが少し楽しくて、私も変になってしまった。

狂気は伝染るのだ。

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