9日目 ページ10
「万次郎……。」
万次郎の抱きしめる力が強くなる。
私はそれに応えるように頭を撫でた。
万次郎はそれ以上、何も喋らなかった。
私は彼が満足するまでこの体勢でいることにした。
私と彼の関係に名前をつけるならこれは“依存”だ。
万次郎は、心の拠り所を探しているんだ。
それから彼とは3日間同じような日々を繰り返した。
有給を貰って1日一緒に過ごしたり、仕事のある日はまた早退した。クビになりそうだったが、部長は何も言わなかった。
3日目の夜。
あの日以来口数が少なかった万次郎が口を開いた。
「俺、もう行くね。3日間、楽しかった。
もう暫く会えないし、会わない。
俺と一緒にいてお前まで目をつけられるのは嫌なんだ。」
万次郎は窓を開ける。
夜風がビュービューと吹き込んで来てとても寒い。
月明かりに照らされた万次郎は申し訳なさそうに笑った。その顔はあの頃の万次郎そのもので、気づいたら私は泣いていた。
「……また絶対会いに来るって約束して。
それまで死なないで。」
万次郎は今まで見たことの無い優しい笑顔で
私の頭を撫でた。私はその顔に見とれて、泣いていることを忘れる。涙は止まっていた。
「また絶対会いに行く。」
そう言って万次郎は私のおでこにそっとキスをおとして次瞬きした時には居なくなっていた。
私は床にペタンと座り込み、冷たい風が吹き込んでいる窓をただ見つめるしかなかった。
……依存しているのは、私の方だ。
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雪ん子(プロフ) - 最高です！！ってことは最終話軸？最終話時空の話見るの初めてなので何だか新鮮でした！！ (7月23日 11時) (
レス) @page30 id: fa924563b5 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - 瀬琉ﾁｬﾝ.さん» コメントありがとうございます。そう言って貰えて光栄です……！ (2022年8月6日 2時) (レス) @page30 id: f3216aef7e (このIDを非表示/違反報告)
瀬琉ﾁｬﾝ. - とても深いストーリーに感動しました...!! 本誌の内容が良い感じに組み込まれつつハッピーエンドで完結できる作者さんの文才うらやましいです((( (2022年8月2日 23時) (レス) id: e12b8018fd (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - 七瀬太さん» コメントありがとうございます！私もとても楽しみにしています！ (2022年7月30日 16時) (レス) id: f3216aef7e (このIDを非表示/違反報告)
七瀬太 - すごい泣ける🥹公式？の方の最新刊も本当に楽しみです！ (2022年7月25日 16時) (レス) @page30 id: 320abee8c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らずぴす | 作成日時：2021年9月24日 9時
