6日目 ページ7
冷たい風が頬を撫でる。
万次郎の髪がサラサラとなびくのをぼんやりと見つめている。意識が遠のいていく。
「俺が怖いだろ……。最低なんだよ俺。だから早くこんな奴見捨てちゃえよ。」
私は腰が抜けてしまいヘナヘナと倒れ込む。
万次郎が馬乗りになり、彼の涙が私の頬に落ちてくる。万次郎は今苦しんでいるんだ。
ああ、そうだった。
変わり果てた彼をたすけたいと、たすけようと決意したのは私じゃないか。
私は遠のいていく意識を必死に保ち、声を振り絞った。
「ッ〜!万次郎!!」
その瞬間彼の手が緩められた。
私は咄嗟に抜け出し必死に呼吸をする。
万次郎の方を見ると座り込み自身の両手を黒い瞳で見つめていた。
私はままならない呼吸のまま、万次郎を思い切り抱きしめた。
「そんな寂しいこと言うなよ!絶対!絶対万次郎のこと見捨てないから!苦しかったら私を頼ってよ……!」
今度は私の目から涙が溢れた。
彼が弱々しく抱き返してくる。
そのまま私の肩に顔を埋めて小さく呟く。
「ごめんなさい……。もう俺、俺がなんなのかわかんない。……怖いよ。」
彼はカタカタと震えていて、私は彼の背中を必死に擦る。
「万次郎、顔上げて。」
万次郎の頬を両手で包んで顔をあげさせると、
嗚咽を抑えて泣いている万次郎がいた。
……なんだ、ちゃんと年相応の顔できるじゃん。
「A……。」
「やっと名前呼んでくれたね。」
無表情で涙を溢していた彼とは思えない、あの頃万次郎がそこにはいた。
少しづつだけどあの頃の面影が戻りつつある。
彼は泣きながらずっと私に謝っていた。
私の裾を掴んで離さない彼を優しくなだめることしか出来ない。
しばらくして、万次郎は落ち着いた。
「さあ、まだ夜明け前だし部屋に戻ろう。」
「ん……。」
泣き疲れたのか、ウトウトとしている。
しばらく寝れてなさそうだったし、今日なら寝れるんじゃないか。
私は彼の手を引き、ベットに寝かせる。
やけに素直だった。
「……Aと寝る。」
「はいはい。」
万次郎は布団に入った瞬間に爆睡した。
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雪ん子(プロフ) - 最高です!!ってことは最終話軸?最終話時空の話見るの初めてなので何だか新鮮でした!! (7月23日 11時) (レス) @page30 id: fa924563b5 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - 瀬琉チャン.さん» コメントありがとうございます。そう言って貰えて光栄です……! (2022年8月6日 2時) (レス) @page30 id: f3216aef7e (このIDを非表示/違反報告)
瀬琉チャン. - とても深いストーリーに感動しました...!! 本誌の内容が良い感じに組み込まれつつハッピーエンドで完結できる作者さんの文才うらやましいです((( (2022年8月2日 23時) (レス) id: e12b8018fd (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - 七瀬太さん» コメントありがとうございます!私もとても楽しみにしています! (2022年7月30日 16時) (レス) id: f3216aef7e (このIDを非表示/違反報告)
七瀬太 - すごい泣ける🥹公式?の方の最新刊も本当に楽しみです! (2022年7月25日 16時) (レス) @page30 id: 320abee8c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らずぴす | 作成日時:2021年9月24日 9時