5日目 ページ6
「今日泊まってもいいか。」
そう切り出されたのは彼が夕食を食べている最中だった。
「いいよ。その代わり勝手に居なくならないでよ。
心配するから。」
万次郎は私の言葉に曖昧に返事をして黙々とご飯を食べる。私は気づいたら彼の頭を撫でていた。
じとりと彼に睨まれる。
「……なに。」
「え、いや。頭にゴミがついていたから。」
自分でもどうしてこんなことをしたかは分からない。
ズキズキと痛む胸を抑えながら必死に誤魔化すことしか出来なかった。当の本人はまた食事に夢中である。
万次郎はなんていうか、怖い時がある。
中学の時にはなかったスイッチが急に切り替わる。
私に銃を突きつけた時もそうだ。今とは違う目付きをしていた。
「じゃあもう夜遅くだし、寝ようか。」
万次郎は私の後ろをのそのそと着いてきた。
それがなんか可愛くてくすりと笑みが溢れる。
二人でベットに入り、電気を消す。
しばらくの沈黙を経て、口を開いたのは万次郎だった。
「俺と一緒にいてさ怖くないの。しかも男と同じベットで寝るとか、分かってる?」
「んー。怖くないよ。それに万次郎だし。大丈夫。」
私がそう言うとふーん、と言って背を向けた。
私と彼の背中が触れる。彼に微かだが温もりを感じた。ちゃんと生きてる。私は初めてここで安心した。
私はいつの間にか、意識を飛ばしてしまった。
・
肌寒さで目が覚める。隣を見ると万次郎がいなくて。
また居なくなったのかと焦るがベランダに人影があったので安心する。
「万次郎。」
私はベランダでタバコを吸っている彼の背中に話しかける。彼は小さく肩を揺らして振り向いた。
その瞬間私は察した。あの時と同じ目だ。
私に銃を突きつけた時と同じ、空虚な目。
これは、やばい。本能で感じ取ったが、気づけば彼の手は私の首を締めていた。
彼の手は冷えきっていて、真っ黒な目が私を射抜く。
無表情なのに、やっぱり私は彼が泣いているように見えた。
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雪ん子(プロフ) - 最高です!!ってことは最終話軸?最終話時空の話見るの初めてなので何だか新鮮でした!! (7月23日 11時) (レス) @page30 id: fa924563b5 (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - 瀬琉チャン.さん» コメントありがとうございます。そう言って貰えて光栄です……! (2022年8月6日 2時) (レス) @page30 id: f3216aef7e (このIDを非表示/違反報告)
瀬琉チャン. - とても深いストーリーに感動しました...!! 本誌の内容が良い感じに組み込まれつつハッピーエンドで完結できる作者さんの文才うらやましいです((( (2022年8月2日 23時) (レス) id: e12b8018fd (このIDを非表示/違反報告)
らずぴす(サブ垢)(プロフ) - 七瀬太さん» コメントありがとうございます!私もとても楽しみにしています! (2022年7月30日 16時) (レス) id: f3216aef7e (このIDを非表示/違反報告)
七瀬太 - すごい泣ける🥹公式?の方の最新刊も本当に楽しみです! (2022年7月25日 16時) (レス) @page30 id: 320abee8c1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らずぴす | 作成日時:2021年9月24日 9時