・ ページ7
.
｢だって…………!｣
ゴクリ、と息を飲む。
もしかしたら凄くヤバイ部活かもしれないし、部員もヤンキーばかりかもしれない。例に、Aを誘ってきた2人はヤンキーにだって見えるからだ。
そんなAの心配をよそに、目を輝かせながら百合は言う。
｢あの、あのバレー部だよ!?｣
『いや、どのバレー部だよ』
Aは思わずツッコミをいれてしまった。
｢あの〜百合さん？｣
伊織が恐る恐る尋ねる。Aにとってこれほどにない助け船だった。
｢さっきからサッパリ話が読めないんだけど………？」
｢えっ、ちょっと待って、3人とも知らないの？｣
うんうんとうなずく3人に、ありえない、嘘でしょ……とぼやく百合。
｢あのね！うちの学校のバレー部は、イケメンばかりって有名だよ！｣
それにマネージャーの先輩も美女だし！と興奮気味に百合は言う。あ”〜見学したい！と自分の世界に入っている百合を見ながら、夏実までもが
「ええなぁ、イケメン…………｣
と、呟いていた。
｢カッコいいのはもう分かったから、ちょっと落ち着こうか｣
伊織がなだめる。それでも、え、だって……何て言う百合。ねぇ、と夏実と意気投合していた。
『あんたらはイケメンにしか興味ないんか』
うん!!と満面の笑みで言う百合はもう末期だと思った。Aは諦めたようにため息をつくと、三人に一番大事なことを伝える。
『だから明日からは一緒に帰れないから、先行ってて』
りょうかーいと息を揃えて言うのを見ると、あぁ友達なんだな、と思ってしまう。
私こっちだから、と一番に帰路につく百合。どんな人がいたか教えてね、ほな、またなー、何て言って、百合化してきた夏実。2人を見送ってから伊織がいう。
｢じゃあね、A。マネージャーの仕事、頑張って｣
『ありがと。じゃあね』
｢うん。バイバイ｣
1人、家までの道を歩きながら、友達がいてよかった、何て考えていた。家についてから、考えるのはバレーのこと。なぜよりによってバレー部なのか。これ程最悪なことはなかった。電話をかけようかとスマホを開く。しかし、これ以上迷惑かけれない、と画面を伏せる。神様がいるなら、一生恨んでやる、と心に決めた。
祖母が、｢A〜ご飯だよ〜｣と呼ぶ声が聞こえた。Aは祖母に悟られたくなくて、元気に返事をして、晩御飯に向かう。
気づかぬうちに、口から、ポロリとこぼれた言葉。
他でもない、“バレー”への拒絶だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 197人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：七瀬月華 | 作成日時：2021年7月29日 15時
