hair ページ9
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「いらっしゃいませー」
何名様ですか、と店員さんが聞いてくる前に自分から申し出る。
「あの、連れが中にいるんですが」
「あぁ、失礼致しました。……奥のお席でお待ちです」
「ありがとうございます」
ちなみに今日のお連れ様、というのは康二ではない。
店員さんの言葉通り一番奥のテーブルで、
こちらに向いている逞しい背中。
「待たせてごめん、……照くん」
「……気にするなって。俺も今来たところだから」
ゆっくりと振り返って笑った照くんは、
笑っているのにどこか悲しげに見えた。
そう。
この人が例の元彼、
紫耀の恋愛相談の電話を浮気と勘違いして、私を振った人。
……気を遣うわけではないが、本当にすごく良い人なのだ。私にはもったいないくらい。
一見怖そうだけれど表情豊かだし、素直な人だ。
「それより、いきなり呼びだしたりしてごめん。
俺ら一応もう別れてるのに」
「ううん、私もちゃんと話さなダメやなって思ってたから」
私たちの視線が交わる。
「……ごめんA。俺、最後ちゃんと話も聞こうとせずに、一方的に終わりにして」
謝って許してもらえるとは思わないけど、と頭を下げだす照くん。
「え!ちょっ、やめて?とりあえず顔上げて?」
そう言えば、おずおずと照くんは顔を上げてくれた。
「……謝るとかいいから、あの時しようと思ってた説明だけ聞いてくれへん?」
「うん、」
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「……そうだったんだ。恋愛相談に乗ってただけ、」
「うん、そう。
けど私も、照くんを勘違いさせるような行動してたのはほんま申し訳ないと思ってる。ごめん」
「いや、Aこそ謝らなくていいって。俺が勝手に考えすぎてたせいだから」
……あぁ、こんなお互いを思いやった話し合いがもうちょっと早くに出来てたら、“今”は違ったんかも。
「なあ……最後だし、俺もちょっと言い訳していい?」
「うん、」
照くんは少しためらうように口をぱくぱくさせてから、
心が固まったように、静かに私を見つめる。
「俺さ、ずっとAは俺じゃない人のこと好きだなって思ってたの」
それはまるで、頭を背後から殴られたような衝撃だった。
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レイ(プロフ) - やいさん» 嬉しいお言葉をありがとうございます…！もう少しペースを上げて更新していくので、お付き合い頂ければ嬉しいです。 (2021年4月30日 23時) (
レス) id: 836a209a6b (このIDを非表示/違反報告)
やい - 素敵なお話すぎて続きめちゃくちゃ気になります…！ (2021年4月30日 1時) (レス) id: cf87cebb1a (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - 名無し63259号さん» ありがとうございます！ちゃんとスー頂きました(笑) (2021年3月15日 23時) (レス) id: 74aabe9229 (このIDを非表示/違反報告)
名無し63259号(プロフ) - さいこうです！更新頑張ってください！スーをさしあげます！！ (2021年3月10日 8時) (レス) id: d883dc3306 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春 | 作成日時：2021年3月8日 1時
