009 ページ9
「こちら魔法使いのAA。で、こっちが──略──」
五条さんから受け持っているクラスの生徒を紹介された。ホグワーツも一学年が多い方ではないと思うが、4人しかいないというのはなんとも珍しい。言うには、呪力を持っている人は少ないんだとか。
「……胡散臭。」
「まあまあそう言わないで、仲良くしてあげて。」
突然見ず知らずの他人が魔法使いを名乗ったら頭可笑しいと思われるのが一般的だと思うが、それにしても辛辣。というか、あんまり歓迎されてなさそう。
「まあそう思うのが普通ですよね。」
「じゃあ、手合わせしてみる?」
五条さんの突飛な提案に「良いけど。」と即答するポニーテールの女の子。いや、即答しないでよ。
「私戦闘向きじゃないのに!」
なんていう悲痛な思いが届く訳もなく反論の余地もなくフィールドに立たされた。とはいえ本当にそれがある訳ではなく、目の前の女の子の眼差しが私を捉えて離さないだけ。それも物凄い圧で。抵抗することを諦め意を決するが、実際どうすれば良いか分からない。一つ確実なのは、そもそもそんなに距離が遠くないこの状態で接近戦が長引く前に手を打たなきゃいけないということ。彼女が勢いよく地面を蹴ったのがスタートの合図だった。
「はっや……!」
避けなきゃいけないのは分かってる、でも身体が言うこと効かない。これはただの運動不足。土壇場でルーモスを使って目を眩ませてなんとか隙を作りエクスペリアームスで武器を飛ばしたが、彼女はその反対の手でそれを掴んですぐ体制を建て直している。ええ、嘘でしょう!?
「ア、アクシオ・スコーエパ!(箒よ、来い)」
鞄の中から箒取り出し、飛び乗る。今の私には上昇させて逃げることしか出来ない。
「はーい、そこまで。」
五条さんの一声で肩の力がフッと抜ける。彼女の方は不完全燃焼みたいだが、指示通り武器を下ろした。下降させようとすると抵抗するように暴れだした箒。いつもよりその揺れは大きく、身体が放り出された。
「しっかりしろよ。」
その身体を受け止めたのは先程まで対峙していた女の子。そう言うと、すぐに私を地面に下ろした。
「禅院さん、だっけ?ありがとう。」
「……私を名字で呼ぶんじゃねえ。真希だ、よろしく。」
暴れる箒を回収し真希ちゃんの方へと向き直す。
「よろしくね。良かった、初対面にして嫌われたのかと思った。」
「初対面で魔法使いとか言われて素直に頷ける方がおかしいだろ。」
「ご最もです。」
49人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ら | 作成日時:2021年1月25日 17時