この世界では、 (ページ7)

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最初は警戒心故だった。それもそうだ、見覚えのない女の子が突然現れたと思ったら呪霊を倒したんだから。あの時はやることがあったから伊地知に任せたけど、話を聞く必要があった。

実際は警戒するような人物ではなかったが、かなりイカれていた。魔法使いで魔法に失敗して新宿に飛ばされたばかりでなく22年後の未来に飛んできたって言うんだから。ドラえもんかよ。彼女にとって魔法はおまけみたいなものだと言っていた。この家族を見ていてもそれは感じられたし、彼らから発せられる情報の多さから優秀な人材だったということも見て取れる。そしてその殆どが聞いた事のない話や名前ばかりだった。

「そう言えば数年前、ハーマイオニーって子から手紙が来たんだった。ほら。」

そう言って手紙の束をもつ兄から手紙を受け取るA。その内容は彼女へではなく、彼女の家族へ宛てたものらしい。それを読むAの顔はどことなく嬉しそうに見えた。

「今や次期大臣候補だって噂。」
「ハーマイオニーならきっと良い大臣になるね。ねえこれ、貰ってっても良い？」
「もちろん。」

魔法大臣というのはこの世界での総理大臣と同じ意味を指すらしい。各々が適当に選んだ手紙の内容をちらりと確認している。溢れた手紙から一枚抜き取ってみた。

「読んでも構いませんか？」
「ええ。それは誰からだったかしら。」
「……チャールズ･ウィーズリー？」

その名前にAが反応を示した。どうやら彼女の初恋相手の名前らしい。クリスマスにカードとプレゼントが来て喜んでたとか、追っかけてスポーツチームの選手になったとか家族の揶揄に「昔の話だから……。」と冷静を装ってるけど、その反面羞恥で顔が赤くなっていくのが可愛くて。

「へぇ～。梟に可愛い名前付けたのもその人のおかげだったりして。」
「五条さんまで乗っかるの辞めてください！」

と、五条の手にある手紙を自分の手もとに引き寄せたA。

「今の魔法は？」
「物体を引き寄せる呪文です。大体のことは無言呪文で片付けちゃうので、魔法使いのイメージとはかけ離れちゃうかもしれないですけど。」

まだ把握はしきれないけど、収穫はあったから来た甲斐があった。そもそも今日の目的はAと家族との再会と情報収集だし、彼女自身も何かヒントを見つけられてれば良いんだけど。

＿＿

･物体を引き寄せる呪文=アクシオ

･チャールズ･ウィーズリー
ウィーズリー家次男。ロンの兄。
Aの1年上で初恋相手。