この世界では、 (ページ15)

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善は急げと出来るだけ早めに箒屋と街で一番人気のパブに情報収集に向かった。イギリスの新聞社にあてがある人に出会え、掻い摘みながら事情を話すと快く協力すると返事をしてくれた。広い人脈を持つ人だそうで機会ができそうだ。それと同時に、五条さん指導による体力づくりも始まった。今まで私の能力を見るために使っていた時間をそれに回したのだという。五条さんがいないときは、一年生の子達が面倒見てくれている。

「どうしたんだ急に。お客様みたいなもんだろ。」
「しゃけしゃけ。」
「このままじゃ嫌だったからかな。今の私は真希ちゃんと正々堂々勝負できない。」
「私かよ。やる気あんなら、休んでる暇ねーぞ。」

そそくさと先に行く真希ちゃん。
「ああ見えても嬉しいんだと思うよ。」と憂太くんが言うのでそういうことなんだと思っておこう。そしてそのまま真希ちゃんの背中を追った。

「…… あの馬鹿になんかされたら言えよ。」
「馬鹿？」
「悟だよ、五条悟。」

生徒に馬鹿って言われる教師ってどうなの。とはいえ最近気付いたことがある。五条さんが私に甘いのは、私の意思でここに居させるためなんじゃないかって。ただの憶測でしかないけど、あながち間違ってはないと思う。自分の顔に惚れない人はいないって思ってるでしょあの人。今のところ何か危ないことしてくるとは思えないけど、

「何かあったら、頼らせてもらおうかな。」

そう会話が切れると、再び真希ちゃんのしごきが始まった。終わった時には疲労困憊で、何よりも先にベッドにダイブした。髪乾かすのめんどくさいなあ。

「最初より動きが軽くなったね。」
「本当!? 嬉しい！」
「まだまだだろ。」
「辛辣だね真希ちゃん。」

ゴロゴロしながら、以前より弾んだ会話を思い出して嬉しくなる。ここには気軽に連絡取り合える友達も知り合いもいない。生きているのだろうが、この状況をどう説明して良いかも分からず連絡を怠っているからだ。五条さんにもたくさんお世話になっているけど、ここにいるみんなと仲良くなって馴染んでいくことが心細さを解消してくれているような気がした。