この世界では、 (ページ13)

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成人してからはあまりお菓子を食べることがなかったから懐かしい気分に浸りながら本来の目的である新聞を目を移した。私が失踪した年からの日刊予言者新聞である。第２次魔法戦争の結果によっては日本にも危険が及ぶと考え魔法省がその年から所蔵用としてイギリスの新聞を取ることにしたらしい。家族からだいたいの話は聞いたが、部長の行方と少しでもヒントを得られたらと思い図書館から借りてきたものだ。

「新聞とこの本は……アニメーガス？これなに？」
「ああ、それは動物になれる魔法ですよ。特訓中なんです。」
「何になるの？」

質問しながら五条は本のページを捲る。あまりにもさらりとやるので今まで気付かなかったけど、洋書もなんなく読めるのか。なんなんだこの人。

「マグルの街にも馴染めるので、猫になりたいなって思ってて。」
「じゃあ、たくさん可愛がってあげるね。」
「嫌な予感しかしないんですけど……。」

もうすぐでなれそうなのになれないところがもどかしい。変身者は魔法省に報告をしなければならないので、７人しか登録されてないところを見ると難しいことは確かだ。仕事の合間に度々マクゴナガル先生に御教授を受けながら特訓を始めて３年が経った。

「特訓付き合ってあげようか？」
「いえ、結構です。」
「まあまあ、そんなこと言わずに～。」

五条さんのだる絡みにも慣れたものだ……嘘、慣れないのでなんとなく流しているだけ。そんな五条さんはよく魔法には驚かされるばかりだというが、私も呪力というものには驚かされるばかりだ。仕組みはどこか似ている部分があるが、限りのない呪霊というのはここに来て初めて聞いたし成している事の割に魔法族よりも規模が小さく人手不足なことも。

「あ、そうだ。この前は助かったよ。」

この前というのは硝子さんの手が空いていなかった時に負傷者の手当てをした時のことだろう。

「あれはただ通りすがっただけで……。」
「Aはさ、出来るのにできないフリするのやめたら？魔法界ではどうか知らないけど、こっちからしたら帰らすのは惜しいくらいの人材なんだから。」

五条さんの言葉は私に真っ直ぐ刺さった。さすがに高く評価しすぎだとは思うが、彼の言葉をそのまま信じてみたいと思う私もいる。自信を無くし始めたのはいつだっただろうか。あの頃の魔法省は内部の腐敗が進んでいた。その中で私は上手く渡り歩くことも改革することも出来ずただ周りから取り残されていくの日々に不甲斐なさを感じていた。