検索窓
今日:2 hit、昨日:3 hit、合計:51,820 hit
小｜中｜大

第24話 ページ25

･


『手を出すな』


浦田先輩の低い声が春瀬先輩の動きを止めた。私はぶたれる衝撃が来なくて目を開けると浦田先輩のマフラーが巻かれた。


『告白の返事してなかったな。春瀬、ごめん。』


春瀬先輩は、目を見開いた。浦田先輩の表情はなんとも言えない失望が混ざっていた。


『今…なんて言った…の？』

『紛れなく春瀬を好きだった。これに嘘はない。でも、付き合えない。』


マフラーはとても暖かった。微かに浦田先輩の匂いもする。落ち着くこの匂い。


『急用ができたから、俺らはこれで』


そう言って浦田先輩は私の手を握ってどこかへと連れ去った。横を通り抜けた際、春瀬先輩はとてもショックを受けていた。エレベーターに乗りもう1階上の展望台に向かった。


扉が開き浦田先輩は、黙って私と一緒に歩く。私は、少し強引に繋がれた右手を見つめていた。離したくないなんて思ってしまう。期待してまう。そんなこんなで、裏の方に来て体が止まった。


『告白の返事はもう少しあとになる。けど、今のお前を後輩としては一生見れないとだけは…言っておく』


最後の方ははっきり聞こえなかったが、この返答に私は少しばかり口元が緩くなった。


『私は、負けヒロインですか？』

『いや、そんなことは！お前は俺のヒロインだ…あっ』

『引っかかりましたね』


これは、つい口走って本音が盛れたのか浦田先輩はそっぽを向いた。彼の気持ちが本物なのかは分からない。さっき、好きだった女を振った。そして、後輩だと思っていた子から、告白を受けて私をどう見ているのかも自分で整理がつかなくなった。きっと彼の状態はこんな感じだろう。


『私の事好きですか？』

『そ、それは、どういう意味だ？』

『そのままの意味ですよ』

『お前、案外意地悪だな』

『褒め言葉として受け取っておきます』


浦田先輩は、壁にもたれかかった。


『期待していい…かもしれない』


浦田先輩は恥ずかしさそうに私に耳打ちした。


『ばっ！そ、そんな事言われたらわたしまで移っちゃいます！！』

『…』


2人して顔が赤くなる。でも、冷たかった私の左手は彼の手によって少し暖かくなったかもしれない。




･

番外編 悪巧み→←第23話



→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
206人がお気に入り
アイコン この作者の作品を全表示｜ お気に入り作者に追加｜アイコン 感想を見る
設定タグ：歌い手 , うらたぬき
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム： 感想：  ログイン

わいなり〜 - うらたさん最後イケメンすぎたんですが…感想叫びますね。高杉いいいいいいいい！付き合ってくれええええええ！！ (2019年7月26日 23時) (レス) id: 44c20bad9a (このIDを非表示/違反報告)
 えのぐ(プロフ) - コメント失礼します。前作から好きでずっと見てきました！細かいところまで表現された感情がとても素敵です！今度こそ夢主ちゃんの恋が叶うのも見てみたいので、1意見としてお願いします。これからも応援してます！ (2019年7月16日 21時) (レス) id: 659d961cb7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名：薇兎ｰらぅｰ | 作成日時：2019年7月16日 8時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。