パン屑3個 ページ5
早朝
まだ日が昇りきっていない時間
人の賑わいも、猫の鳴き声も聞こえないこの時間は好きだ
ただ黙々と、パンを焼いていればいいから
毎日嗅いでいる、パンが焼ける匂い
香ばしいものから、甘いものまで…
様々が色を持ち、ツヤを纏うこの瞬間が好きだ
昨日は気が乗らなかったあのパンも、今日は作ってみようか
そんなことを考えていると、もうすぐに辺りは明るくなった
常連達が挙って買いに来る時間
想定通りの売れ方に少しの飽きを覚えていると ふと客が途切れた
向こうには人が居るが、一向に前に進まない
顔を覗かせると、小さな影が懸命に背伸びをしていた
『⋯お前、1人か?』
「おつかいなの!くろわっさんと、ばけっとと、すきなの!」
『好きなのって…お前は何が好きなんだ?』
言われた物を袋に詰めて、最後の注文を待つ
後ろの客の顔色を伺うも、怒っている様子はなく 一安心
ショーケースの中を、キラキラとした目で眺める子供
その影が、昨晩の子供達と重なって見えた
「これ!ぼくこれすきなの!」
『これって…あぁ、これはドーナツって言うんだ』
「どーなちゅ!」
『あぁ……次からはそう言うんだぞ』
嬉しそうな顔に、心が暖かくなる
それと同時に嫌な予感がちらりと覗き、体が動いた
43人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
_teto__teto_(プロフ) - とくめいさん» ありがとうございます。これからもっと増えると思いますが…何卒、よろしくお願いします┏● (2023年2月27日 21時) (レス) id: 81bd52e713 (このIDを非表示/違反報告)
とくめい - コメント失礼します。こちらのお話めちゃ好みに刺さりました!v.v.tの登場も熱い!応援してます更新ファイトです!(プレッシャーになりませんように…) (2023年2月26日 19時) (レス) id: e3803de454 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:_teto__teto_ | 作成日時:2023年2月14日 18時