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呪文71 ページ24

ピピピッと電子音。

眠い。まだ眠い。起きたくない。

その思いを払って体を起こす。

今日は使い魔の音ではなく、目覚まし時計の音で目が覚めた。

何となく、久しぶりにその音を聞いた気がした。

手早く準備を始める。

休みだから、軍服は着なかった。

休みなのに、まだほの暗い早朝に起きたのは、シノアたちに呼ばれていたからだ。

次の吸血鬼殲滅。

私の隊が来れない殲滅では、私は再びシノア隊と行動を共にすることになっている。

シノア隊には、幻術を使う人がいない。

真っ直ぐに、正面から戦うしかない。

ヨハネの四騎士殲滅部隊の私が吸血鬼殲滅に駆り出されるのは、

そんな彼らの欠点補充のためだった。

身支度を終えて、扉を開ける。

「「「あ」」」

開けてすぐそこに、三人が立っていた。

与一、君月、そして寝癖のついた優だ。

与一「おはよう、Aちゃん」

ノックしようと握った手を開いて、小さく振るのに、

私は軽く礼をして応える。

どうやら迎えに来たようだ。

優「Aのそれは、寝癖なのか?」

左右に少しずつはねた短い髪を優が指した。

見ようによっては獣の耳のようにも見えるそれは、寝癖ではなく癖だったので。

いえ、と首を振った。

優「でもさ、Aって面白い髪してるよな」

歩きながら優が続ける。

君月「下だけ、何かかけてるんですか?」

A『否定。長くなると、こうなったと回答します。』

物珍しそうに、夜色の髪を見る彼らに

A『提案。伸ばしてみては?』

こう続けた。

ちょっとした沈黙。

君月「い、いや、やめとく」

優「きっ、君月が髪長いとか…」

目をそらした君月を、優と与一が笑う。

お腹を押さえながら、笑い続ける。

…確かに想像すると、少しおかしい。いや、違和感の塊だと思った。

君月「てか与一、お前笑いすぎだろ」

ツボった様子の与一を、君月が叩いた。

与一「あはは、ごめん、でも、あはははっ」

しかし与一は笑いが収まらないようだ。



優「んーで、シノアんちたぶんここだよな」

笑いが収まった頃、四人は煙が溢れ出る扉の前に立っていた。

髪を伸ばした君月のごとく異様な扉に、少し戸惑う。

優「なんか焦げ臭くね?」

与一「煙出てるよね」

漂うのは白い煙。幻術の匂いはしない。

明らかに、物が燃える匂い。

そこに、

「きゃああああああああああ!!」

悲鳴なんて混じったら。

不安に負けて、優が勢いよく扉を開けた。

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cocolove420(プロフ) - 面白いお話で続きが気になります!これからも頑張って下さい!応援しています! (2017年9月30日 15時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アルカーヌ | 作成日時:2017年4月5日 13時

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