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呪文61 ページ14

そんな私を見兼ねたのか、それとも思い出したのかはわからないが。

グレンが片手で持っていた物を私の前に突き出す。

グレン「これ使え」

そう言って渡されたのは、ステッキだ。

少し遠慮がちにそれを受け取って、私は部屋を出た。



__________





外。

久しぶりに見る太陽がやけに眩しい。



梱「……ああ、A。生きていましたか」

芝居がかった敬語口調。しかしそこに、安堵の色が覗いていた。

その少し後ろで、木賊祇も不機嫌そうな笑みを浮かべている。

ステッキを引きずるように歩いていた私に、二人が歩み寄る。

A『……意外なメンバーですね』

彼らを見上げてそう零す。

梱「枳は貴方が消えてから部屋に篭り切りですから。

  咲はお呼びだしを喰らったようで。柊家から」

そう言った後、ふと梱が振り返る。

木賊祇もそうだ。

私も静かに目線を動かす。

そこにいたのは、あの戦場で、私のメンバーをヘリに乗せてくれた人達だ。

人の良い隊長は手をひらひらと振って、メンバーを宥めているが、

隊長以外のメンバーが、憎悪の視線をこちらに向けていた。

声を荒げて何かを叫んでいる。

聞き取れはしないが、こちらを指差して睨んでいることから、

良いことではないだろう。

木賊「ふーん、あれは喧嘩売ってるよねぇ」

木賊祇も、見た目で忘れがちだが梱も、

立派な不良だ。

売られた喧嘩は嬉々として買う主義だろう。

二人が足を踏み出そうとしたとき、

私はそれより一歩早く動いた。


木賊「……喧嘩売る方が悪いと思わない?小さな分隊長様?」

私に後ろ髪を引かれた木賊祇が、不機嫌そうに呟く。

私が軽く肩を当てて止めた梱も、振り返って文句ありげな表情をする。

それだけで今回止まってくれたのは、私の身を案じてだろうか。

A『無視された方が、むかつくと、思いませんか?』

その考えに、不良たちは納得する。

悪い笑みを浮かべて、彼らに背中を向けた。


彼らが怒っている理由は、おおよそ予想がつく。

あえて何があったか、とは聞かないけれど。

一つのグループとして、グレン曰く、【家族】として、

ずっと一緒に動いていたから。

もう今では、喧嘩くらいしかしなかったから。

他の隊に預けても問題無いと思っていたのだけど。


【家族】。

一人でも欠けたら、それは成り立たないのだろうか。

彼らはこのメンバーを、【家族】と信頼しているだろうか。

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cocolove420(プロフ) - 面白いお話で続きが気になります!これからも頑張って下さい!応援しています! (2017年9月30日 15時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アルカーヌ | 作成日時:2017年4月5日 13時

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