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呪文49 ページ2

何度か、フェリドの屋敷で見たことがある。

確か彼は強いはずだ。



クローリー「…ん?」

私の手が動く。

手に持っていたのは、小さな紙飛行機。

それをクローリーに向かって飛ばす。

その呪符を、紙飛行機に折る人なんていないだろうから、流石のクローリーも

訝しげに動きを鈍らせる。

それを飛ばすと同時に後ろに下がった私は、

視界に入った景色を見て、感覚的に人間が近くにいないと判断する。

すぅ、と小さく息を吸って、

言葉とともに小さく吐き出す。



A『カプノス許可故、エクスプローション、実行』



ダンッと、地響きにも銃声にも似た音が、鼓膜を弾くように震わす。

呪符に見せ掛けたそれは、魔術の書いてある紙だ。

魔女の私に、人間の呪いが扱える訳無い。

立ち込める煙。

その中に立っていたクローリーの姿が見え始める。

睨むように細められた金の瞳が静かに揺れる。


クローリーは余裕げに笑っていた。

傷も、ただのかすり傷。

当然といえば当然。

あんな簡易化魔術で貴族に深手を負わせられるなら、魔女はあの時吸血鬼にやられなかった。



槍を構えようかと考えた。

しかしそんな時間があるだろうか。

もし槍を構えたとして、彼の攻撃を受けきれるだろうか。

こんな体じゃ、吸血鬼の攻撃なんて受けられない。

神懸かりの術をかけるには、圧倒的に時間が足りない。


本格的に魔術を使おうか。

もしかしたら、上手く行くかもしれない。

でも使ってしまえば、私は魔女とばれてしまう。

それで良いのか。

……。

いや、駄目だ。まだ、駄目だ。

まだ私は弱い。まだ、駄目だ。また、駄目だ。



日の光がギラリと反射される、大きな剣が振り下ろされる。

心臓は狙っていない。

殺すつもりでは無いのか。


逃げてみようか。

ジリ、と足が少し下がる。

しかし記憶が蘇る。

フェリドの屋敷。もう無いはずの首筋の痛み。霞む視界。









すると急に体が引かれる。

考え事をし、狭まっていた視界に黒い軍服が移る。

人の体温の感覚。



クローリー「おっと…へぇ〜、人間のわりにはやるねぇ。何者なのかな」


私を庇うように立っているのは君月だと理解する。

君月の背中から覗かせた片目に、赤が飛び散る。

優が、クローリーの腕を切り落としたのだ。

隣では、シノアが思考するように視線を動かしている。


クローリー「その子、フェリド君に連れて来いって言われてるんだ。

  渡してくれるかなぁ」

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cocolove420(プロフ) - 面白いお話で続きが気になります!これからも頑張って下さい!応援しています! (2017年9月30日 15時) (レス) id: 66c6f3f00c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:アルカーヌ | 作成日時:2017年4月5日 13時

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