34、為すべきことを成す ページ39
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ポートマフィア内で、金庫室より警備の厳重な部屋。
部隊百人長以下の階級の者は、一人で上がることは決して許されぬ部屋。
即ち、最上階。
そこはまるでお通夜みたいな空気だった。
「畜生、あの女。Aの異能を知った上での攻撃か。手下でも何でも使って僕一人を追ってくれば望み通り過去を抹消してやったものを……」
芥川君が毒づく。その声は、滲む悔しさのせいで掠れていた。
「多分彼女は、武力では君に適わないと分かっていたんだ。……わたしのせいだ。わたしが、自分の異能のみならずその情報をコントロールできていれば」
「責任の被り合いをしている暇があるのかね?」
リンタロウは、まるでチェスの駒を進めるようにそう云った。
「……」
「手短にいこう。解決策は二つ。太宰君の協力を得て菊池寛に異能を使ってもらうこと。果たして太宰君が、というより探偵社がこれを許すかねぇ。もう一つは単純。菊池寛を殺すこと」
「……」
「本来、ポートマフィアには芥川君、君を保護する理由などないのだよ。君の貧民街時代の不始末なんぞ我らには関係ないからねぇ。だが……Aちゃんの異能が漏れていたこと。これが気になる。有川姉妹の異能はその強力さと凡百証拠の隠蔽に向いた性質故に組織内でも最も機密度が高い。あるとすれば、太宰君か君の姉上が漏らした可能性だが……」
「それは無いよ」
「それは無い」
わたしと芥川君は同時に云った。
「だよね」
リンタロウが云った。
「太宰さんの助けなど不要……僕の過去は僕で精算します。菊池寛を殺す」
「君の気持ちも判るがね。情報源が明らかにならない限り、たとえ芥川君の命が助かったとしても軈て組織は終わる。今回情報の管理が杜撰だったのは、疑いようなく私の責任だよ。
どんな結果になろうとも君たちが自分を攻める必要はない。全て私の責任だ」
「……リンタロウ」
そこにいるのは、父親代わりのその人ではなかった。
其れは紛うことなき、組織の長の顔だった。
「だからね、ほぼ一択だ。一週間ある。その間私とAちゃんで探偵社を説得する。芥川君は黒蜥蜴を率いて菊池寛の居場所の特定に尽くしなさい。」
「はっ」
二人分の声と、最敬礼する影が重なった。
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やつがれ
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羅生門 - 大丈夫かい?花川君。 (2021年3月31日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - 龍之介君、ツボ推そうか?君といたらこっちまで君に感情輸入しちゃって大変な事になりそうなんだ。…咳を止めたくば血を抜け。私もそうした。 (2021年3月31日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - 私の口癖、『可哀相』。それしか無いな。 (2021年3月31日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
どどるげふ(善逸大好き) - 更新お待ちしておりましたーーー!!!!! もう更新されないのかと思ってましたが、毎日覗きにきたかいがありました(>_<)これからも更新頑張ってください*(^o^)/* (2021年2月14日 20時) (レス) id: 6deb9162af (このIDを非表示/違反報告)
千風(プロフ) - くりぇーとかさん» ありがとうございます!!自分たちの趣味ドストライクの子なので…!お気に召しました様でめっちゃ嬉しいです!!!何分そら豆の低浮上と私の掛け持ち(おい)でのんびりにはなってしまいますが…恨まず気軽に待ってやって下さい! (2018年12月20日 17時) (レス) id: 277371ed72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そら豆・千風 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時:2017年5月11日 20時