19、歓喜も堪能も ページ24
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別日。
地下牢にて。
***
「死を惧れよ」
黒い影が囁く。
「殺しを惧れよ」
夜の闇が蠢く。
「死を望むもの、等しく死に……」
哀しい人だと、私は思う。
「望まるるが故に……」
其奴は、ぴたりと足を止めた。
「善き心がけだ、鏡花。僕が生きる意味を与えてやろう」
姿の無い外套が揺らめき、私の首筋を狙って襲いかかる。
……鋭い痛みが走った。
私は一つ瞬きをする。
どうせまた、暗殺だろう。
いっそ、自分で首を斬って仕舞おうか。
「鏡花____。 、 」
「え……?」
理解が出来ない。
何を云っているの?
このひとの唇の動きは目で追えた。
このひとの喉の震えも耳が捉えた。
でも、それを合わせてひとつの『言葉』に出来ない。
余りにも、マフィアの狗が放つ言葉とは思えなかった。
「二度は云わぬ」
台詞はたった一瞬で、其の声を連れて絶対零度の薄氷の上に戻って仕舞う。
彼は鉄格子の南京錠に大振りの鍵を差し込んだ。
「お前を此処から出してやる。安心しろ、任務は暗殺ではない」
「では何」
「誘拐、そして__
__『脱獄』だ」
判ってる。
如何せ、脱獄 “の援助„ だ。
でも、期待、くらい。
「先日の任務で、中島敦……人虎と逢った」
淡々と言葉が紡がれる。
「奴は……行け好かん。誠に行け好かん。太宰さんは__……だが、確かに其の魂は信ずるに値する。僕がこの目で見てきた。だから、鏡花……」
芥川は、何か機械の様なものを此方に投げた。
「其れが何かについてはじき判る。……そして、任務の時まで隠しておけ。誰かに貸せと云われるまで、誰にも渡すな」
「……了解した」
おかしな話。
まるで中身を見てはいけない御守の様だ。
……でも、それもいいかも知れない。
予感がした。
私はきっと、次の任務で死ぬ。
最後の命令がこんな口約束なら、其れは其れで……。
__強いて挙げるなら、彼の人に認めて欲しかった。
「鏡花、お前……Aに似てきたな」
単に和服だからか、と云う何かを取り繕う様な台詞も耳に入らず、私はこの複雑な心情を誰かに話したい、自慢したいような謎の衝動に駈られた。
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本日のやつがれ予報!
やつがれ
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羅生門 - 大丈夫かい?花川君。 (2021年3月31日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - 龍之介君、ツボ推そうか?君といたらこっちまで君に感情輸入しちゃって大変な事になりそうなんだ。…咳を止めたくば血を抜け。私もそうした。 (2021年3月31日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
羅生門 - 私の口癖、『可哀相』。それしか無いな。 (2021年3月31日 14時) (レス) id: b3d6820988 (このIDを非表示/違反報告)
どどるげふ(善逸大好き) - 更新お待ちしておりましたーーー!!!!! もう更新されないのかと思ってましたが、毎日覗きにきたかいがありました(>_<)これからも更新頑張ってください*(^o^)/* (2021年2月14日 20時) (レス) id: 6deb9162af (このIDを非表示/違反報告)
千風(プロフ) - くりぇーとかさん» ありがとうございます!!自分たちの趣味ドストライクの子なので…!お気に召しました様でめっちゃ嬉しいです!!!何分そら豆の低浮上と私の掛け持ち(おい)でのんびりにはなってしまいますが…恨まず気軽に待ってやって下さい! (2018年12月20日 17時) (レス) id: 277371ed72 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そら豆・千風 x他1人 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/
作成日時:2017年5月11日 20時