俺の為に作ってくれ (ページ6)

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私は不審男…否、お客さんを店の中にあるイートインスペースへ誘導する。

『今からお作りするので少々お待ちください』

私は母に店番をお願いし急いで厨房に入り五平餅を作り始めた。串にうるち米を練りつけ、型崩れしない様に素焼きする。そして祖父母の代から受け継がれた秘伝の味噌ダレを塗って香ばしく焼き上げる。

『……出来た！』

五平餅を皿に盛り付けてお客さんの元に戻る。

『お待たせしてしまい申し訳ございません。こちら五平餅です！』

お客さんの前に出来たての五平餅を出すと、お客さんはマスクを外して手を合わせて｢いただきます｣と言って大きく口を開けて五平餅を食べた。

？｢…うっま！やっぱこの味だわ！｣

『ありがとうございます。五平餅お好きなんですか？』

？｢あぁ、昨日後輩が買ってきたここの五平餅がめっちゃ美味くて、また食べたいなと思って…｣

『そうなんですね。美味しいと言ってくれて嬉しいです』

お客さんは何度も美味い！と言いながら五平餅を頬張っている。こんなに五平餅好きな人なんだなぁ……

……あれ？この人もしかして……
さっきまでマスクのみだったが、お客さんの顔をしっかり見ると彼の正体が分かった。

『あの…塚のことをお聞きしますが、東海オンエアのとしみつさんですか？』

と｢あ、やっぱ知ってたんだ｣

やっぱとしみつさんご本人だった！！
まさか私の店に有名人が来るとは──！！

『申し訳ございません！プライベートの時間ですよね！』

と｢いやいや、実はさぁ昨日─────｣

としみつさんは昨日の昼食での出来事を教えてくれた。

と｢──ってことなんだ｣

『そうなんですか。ありがとうございます！』

と｢にしても、マジでこの五平餅美味すぎだろ。作ってるのは親父さん？｣

『いえ、ここの五平餅は全て私が担当しております』

と｢嘘ｯ!?｣

としみつさんはとても驚いた顔で私の顔を見ていた。そんなに凄いのかな？祖父母に言われた通りに作ってるからなんてことも無いけど…

と｢お姉さん凄すぎだろ。まさに五平餅の神だろ｣

『五平餅の神…笑そんな事ないですよ』

としみつさんは残りの五平餅を味わい、再度手を合わせて｢ごちそうさまでした｣と五平餅を堪能した。

と｢土日じゃないのにご馳走になってすみません｣

『いえいえ、またいらしてください』

と｢今度はちゃんと土日に来るから！｣

『はい。ありがとうございました』