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虜囚ノ虎ト深紅ノ姫君ー 和解 ー ページ49

×××


骨が軋む程の力だった。
アンは中島を壁に押し付けたまま、(ボタン)で作られて瞳を彼に向けている。モンゴメリは、中島の行おうとしている作戦が、何れ程に危険な事なのかを判っていた。


「無理よ! ここは空の上なのよ? どこに居るかも判らないその人に、どうやって人形を渡すつもり!?」


彼女の云う事は正論だ。彼が居る場所は空の上、眼下に見える広い街の、何処に居るのか判らない太宰に人形を渡すのは、殆ど不可能に近かった。

けれど、中島の瞳には強い意志が宿っていた。迷いの無い其の瞳を見てしまうと、モンゴメリ は何も言えなくなってしまい、グッと言葉を詰まらせる。


「そう......やるのね」


白鯨(モビー・ディック)』の対空砲に撃たれて死ぬか、地面に叩きつけられて死ぬか、若し無事に地上に着いたとしても、其の地上の狂った人達により引き裂かれて死ぬか、何方にしても、彼の身に降り掛かるのは“ 死 ”だ。


「どれしかないと知ってて、やるのね」

「昔読んだ、古い書巻(ほん)にあったよ」


“昔、私は、自分のした事に就いて後悔したことはなかった。”

“しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた。”


「僕は後悔したくない」


院の図書室で埃を被っていた書巻(ほん)。書いた人物の名前は忘れてしまったが、中島は其の書巻に書かれていたフレーズを、鮮明に覚えていた。

何もしないまま、後悔をする事だけはしたく無い。今の自分に出来る事が有るならば、其れを遂行する事で、皆を救えるかも知れないのなら、危険だと承知の上で遣る可きだ。

アンの腕が振り下ろされる。
中島は攻撃をされると思い、咄嗟に身構えた。
だが、攻撃はこなかった。代わりに一つのリュックサックを渡される。


落下傘(パラシュート)よ、万一あたしが逃げる時のために一つ隠しておいたの。差し上げるわ」


モンゴメリは呆れた表情になり、肩を竦めると溜息を吐く。


「空の上から飛び降りるなんて馬鹿な殿方、見てられないもの」


唯一の出口である黒い扉を指差すと、彼女は其処を白鯨の外壁に繋げたことを教えた。


「後は落ちるだけよ」

「......いいのかい? 僕を逃したら君は組合から......」


己を白鯨から逃した事が判ってしまえば、彼女は裏切者となり、今度こそ居場所を失ってしまう。

モンゴメリは苦笑した。


「独りぼっちは、最初からですもの」


深紅の姫は、虎の虜囚を救う為に孤独を選ぶ。


×××

続編ヘノ御知ラセト感謝→←虜囚ノ虎ト深紅ノ姫君ー 想像 ー



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設定タグ:太宰治 , 文豪ストレイドッグス , 恋愛   
作品ジャンル:アニメ
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ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時

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