虜囚ノ虎ト深紅ノ姫君ー 和解 ー ページ49
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骨が軋む程の力だった。
アンは中島を壁に押し付けたまま、
「無理よ! ここは空の上なのよ? どこに居るかも判らないその人に、どうやって人形を渡すつもり!?」
彼女の云う事は正論だ。彼が居る場所は空の上、眼下に見える広い街の、何処に居るのか判らない太宰に人形を渡すのは、殆ど不可能に近かった。
けれど、中島の瞳には強い意志が宿っていた。迷いの無い其の瞳を見てしまうと、モンゴメリ は何も言えなくなってしまい、グッと言葉を詰まらせる。
「そう......やるのね」
『
「どれしかないと知ってて、やるのね」
「昔読んだ、古い
“昔、私は、自分のした事に就いて後悔したことはなかった。”
“しなかった事に就いてのみ、何時も後悔を感じていた。”
「僕は後悔したくない」
院の図書室で埃を被っていた
何もしないまま、後悔をする事だけはしたく無い。今の自分に出来る事が有るならば、其れを遂行する事で、皆を救えるかも知れないのなら、危険だと承知の上で遣る可きだ。
アンの腕が振り下ろされる。
中島は攻撃をされると思い、咄嗟に身構えた。
だが、攻撃はこなかった。代わりに一つのリュックサックを渡される。
「
モンゴメリは呆れた表情になり、肩を竦めると溜息を吐く。
「空の上から飛び降りるなんて馬鹿な殿方、見てられないもの」
唯一の出口である黒い扉を指差すと、彼女は其処を白鯨の外壁に繋げたことを教えた。
「後は落ちるだけよ」
「......いいのかい? 僕を逃したら君は組合から......」
己を白鯨から逃した事が判ってしまえば、彼女は裏切者となり、今度こそ居場所を失ってしまう。
モンゴメリは苦笑した。
「独りぼっちは、最初からですもの」
深紅の姫は、虎の虜囚を救う為に孤独を選ぶ。
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ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» 有難うございます!コメント、本当に嬉しいです。続編も頑張りますっ (2019年7月17日 23時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 第二シリーズお疲れさまでした(拍手) 続編も心待ちしております、ミサぽんさんのペースでこれからもよろしくお願いします。 (2019年7月17日 23時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
ミサぽん(プロフ) - 夜宵 ―ヤヨイ―さん» コメント有難うございます、何回もしてくださり 本当に嬉しいです! 楽しんでもらえるよう 頑張りますっ (2019年6月16日 16時) (レス) id: ec52e47c5d (このIDを非表示/違反報告)
夜宵 ―ヤヨイ― - 早速の続編!ありがとうございます!!(感涙) (2019年6月16日 16時) (レス) id: 03eb66dcd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ミサぽん | 作成日時:2019年6月16日 15時