シークレットノート【檜山光成】 (ページ47)

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【放課後、教室で待ってて】

その文章を思い出しては、体操服から制服に着替える手が止まる。

深い意味はあるのかな。

なかったらなかったでいいんだけど、もしあったら？

あったとしたら、それは何？

心臓の音が速くて、うるさくて、苦しい。

檜山くんのことを好きになってから、ずっと苦しい。

好きすぎて苦しい、なんて言葉は少女漫画の世界だけだと思ってた。

人を好きになると、檜山くんを好きになると、こんな思いをするの？

いつもより着替えるのがかなり遅くなって、気づけば更衣室には誰もいなかった。

檜山くんはもう教室に戻ってるのかな。

少しくらい、期待くらいは、してもいいかな。

私は檜山くんのこと、こんなにも苦しくなるくらい好きなんだよ。

そんなこと言ったって、檜山くんはどう思ってるか分からないけど。

ドアの前に立ってセーターの上からぎゅっと左胸を抑えると、かすかに聞こえてきた足音が私の近くで止まる。

檜「ごめん、待った？」

『ううん、全然。今来たとこ』

檜「良かった」

ドアを開けていつものように優しく微笑みながら、私を先に教室に入れてくれる檜山くん。

誰もいない夕日が入り込む教室には、私と檜山くんだけ。

お互い無言で荷物をまとめながら話すタイミングを伺っていると、先に帰る準備のできた檜山くんが口を開いた。

檜「咲本に、伝えたいことあって」

『うん…なに？』

静かになった教室に、私の心臓の音だけが響いてるんじゃないかと思うくらいうるさくなる。

今までにない拍動の大きさで、自分でもビックリするくらいだった。

檜山くんと目が合えば、檜山くんもそれは同じみたいで。

それでもまっすぐに私のことを捉えて、檜山くんは1秒も目を逸らさなかった。

形の整った檜山くんの薄い唇がわずかに開けば、彼の気持ちが言葉となって私の元へ届く。

檜「好きです」

あまりにも静かな教室に、私が1番望んでいた人からの、1番望んでいた言葉が発せられた。

それでもまだ、目を逸らさずにまっすぐ私を見つめる檜山くん。

檜「咲本のことが、好きです」

もう一度、私に届くように伝えてくれた。

檜「付き合ってくれませんか」

グッと手のひらを握りしめる檜山くんの声は少し震えていた。

そんなの、答えは決まってる。

『…お願いします』