シークレットノート【檜山光成】 (ページ44)

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火曜日。

昨日はそのまま顔も見ずに帰っちゃったから、今日は檜山くんとちゃんと話さなきゃいけない。

あんなこと言ってごめんって謝りたい。

気持ちは十分にあれど、私は行動にするのは苦手らしい。

朝起きると身体がだるくて登校するのがギリギリになってしまって、滑り込みで席に着いた。

手紙を回そうかと考えて文章を綴っては筆箱にしまう。

そんなことを毎時間していれば昼休みなんてあっという間に来てしまうもので、半日が終わってしまった。

でもクラスを見てる感じだと、昨日のことはほとんど知られてないみたいだからちょっと安心した。

私から話さなきゃいけないのに、檜山くんと目が合わせられない。

タイミングは何度もあったのに、檜山くんと目が合うと反射的に逸らしちゃって、逃げてしまう私が悪い。

青木くんにも、大丈夫だから！って背中押してもらったのに、肝心なところで勇気が出ない。

檜山くんから手紙が回ってくることもなく5限目を終えると、朝から耐えていた身体のだるさが急に襲ってきた。

保健室行こうかな…。

でも、まだ檜山くんと話せてない。

次は現代文だから手紙を回すチャンスでもあるし、6限目だから最終的に寝れば大丈夫。

授業が始まって10分もしないうちに、体調が本格的に悪くなってくる。

机に突っ伏す方がしんどくて、楽になれる体勢を探すけどなかなか見つからない。

やばい、これダメかも…。

檜「咲本、大丈夫？」

隣から優しく声をかけてくれたのは、檜山くんだった。

私があんなにひどいこと言って、何も謝ってないのに、まだ優しくしてくれる檜山くんに、涙が出そうになる。

ここで強がることの方が私には難しくて、優しい檜山くんに素直に甘えることにした。

『…大丈夫じゃない、かも』

檜「保健室行こう。すみません、咲本が体調悪いみたいなんで保健室連れて行きます」

おばあちゃん先生に許可をもらって、支えられて立ち上がると視界がふらつく。

後ろのドアから教室を出て、檜山くんに支えられながら保健室に向かう。

2人の間に特に会話はなくて、檜山くんが歩幅を合わせてくれるだけ。

『ごめんね』

私がそう言うと、檜山くんは私の頭に優しく手を置いた。

檜「咲本が謝ることなんてないよ。今はゆっくり休んで」

私の頭を撫でる檜山くんは、どこまでも優しかった。