シークレットノート【檜山光成】 (ページ42)

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結局、学校を抜け出して帰ってしまった。

一応先生には一言だけ言って早退扱いにしてもらったけど。

始業ベルはとっくの前に鳴っていて、今は9時手前。

共働きの家庭だけど、お母さんはまだ家から出てないはずだから、お昼前まで駅でうろつく。

開店したばかりの駅前のカフェで飲み物を注文してボーッと窓の外を見ていると、スマホから着信音が響いた。

電話の主は意外な人物で。

『もしもし』

青「もしもし、Aちゃん？今駅前のカフェにいる？」

『はい、いますけど』

青「僕もそっち行っていい？」

『え？はい、どうぞ』

電話が切れると、5分もしないうちにお店にお客さんが入ってきた。

ピンク色の髪をした人物がこちらに近づいてくる。

『えっ、青木くん、髪…！』

青「そう、染めたのー！可愛いでしょ？」

ニコニコと可愛い顔をしながら私の向かいに座る青木くんは、昨日髪の毛をサクラ色に染めたらしい。

いちごミルクみたいな、雰囲気だけでも甘くて可愛い。

『思い切りましたね』

青「1回は派手髪にしてみたくてさ。金よりピンクの方が可愛いなって思って」

『可愛いです』

青「あはは、ありがとう」

飲み物を注文するだけでも可愛くて、本当、癒される。

青「なんでこの時間にこんなとこいるの？学校は？」

『あー…えっと、サボりました！』

青「えっ、珍しい。でも制服は着たんだ」

『一応行ったんですけど、なんか面倒くさいなーって思って』

青「行くだけ偉いね。で、ちょっと気になったこと聞いていい？」

『なんですか？』

青「そのセーター、どうしたの？」

肌寒くてまだ着たままだった紺色のセーター。

チョークは軽く檜山くんが払ってくれたけど、紺色だから目立つし汚れは残りそう。

『まぁちょっと、いろいろ…』

青「…いじめられてたりしてないよね？」

『いじめではないですよ、さすがに』

青「いじめ " では " ないんだ」

いじめではない、よね？

ちょっと人間関係にいざこざがあっただけで。

青「他に理由、あるんじゃないの？」

向かい側に座る青木くんは、心配の意も含んでただただ優しい目線を送ってきた。

さっきのことを思い出すだけでも泣きそうになるから、目線を合わせないように下を向く。

『…泣いちゃいます』

青「泣きながらでも聞くよ」

頭を撫でてくれると、ぽろぽろと涙がこぼれてきた。