シークレットノート【檜山光成】 (ページ40)

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月曜日。いつもの時間帯に教室に入ると、見知らぬ女の子が黒板の前でチョークを握りしめて立っていた。

隣のクラスの子だったかな。

彼女は私に気づくと、持っていたチョークを私の足元に投げつけた。

「あんた、光成くんのなんなの？」

『え？』

「光成くんのなんなのって聞いてんの！」

彼女の手元にあった黒板消しを投げられて、避けたつもりが着ていた紺のセーターに当たって粉が舞う。

『ちょっと、やめてよ』

「光成くんのなんなのよ」

『なにって、クラスメイトだけど』

「じゃあなんで2人でデートしてるわけ？」

指さした黒板には、私が土曜日に檜山くんと出かけたときの写真がこれでもかと貼られてあった。

こんなにたくさん、しかも全部ついて来てるような後ろ姿の写真や横を向いているばかりだった。

ついでに黒板には「ふざけんな」「男たらし」「釣り合わない」など、心無い言葉が書かれてあった。

『ちょっ、何これ…』

「デートしてたくせにただのクラスメイトだなんて、嘘に決まってる」

彼女の言葉を聞くより先に、もう1つ置いてあった黒板消しで文字を消そうとしても、筆圧が強くてなかなか消えない。

貼られた写真も剥がすように回収していると、また黒板消しを投げつけられる。

『やめてってば！この前、1週間くらい続けて写真貼ったのもあんたでしょ？』

「だったら何？もう光成くんと関わるのやめてよ！私の光成くんだから！」

『はっ…？』

彼女ってこと…？

写真を回収したり文字を消していた私の手が止まる。

「分かったなら、もう二度と光成くんに近づかないで」

それだけ言って、黒板消しを私の足元に投げつけて教室を出て行った。

私の光成くん、って、そういうことだよね？

…なんだ、彼女いるじゃん。

全部ウソだったんじゃん。

期待して舞い上がって喜んでた私が馬鹿だった。

ただの思わせぶりにすぎないのに、楽しくなっちゃって。

結局傷つくのは私じゃん。

まともに恋愛なんてしたことない私が、こんな簡単に恋が叶うはずなんてなかった。

分かりきってたことなのに、目にじわと涙が滲む。

視界がぼやける中で必死に黒板を綺麗にしていると、ドアから聞き慣れた声が、今は聞きたくなかった人の声が聞こえた。

檜「咲本…？」