シークレットノート【檜山光成】 (ページ39)

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檜「ドラマ観てるって言ってたし、俺も映画見たかったから、一緒にどうかなって思って」

『それだけ？』

檜「え？うん、それだけ」

『分かった』

檜「えっ何が？ちょっと待って、俺なんて返せば正解だった？」

『正解とかないんだけど、なんでかなって思って』

檜「えー…」

『他に理由あるの？』

檜「あるにはあるけど」

『なに？』

檜「教えない」

『なんで？』

檜「なんでも」

『ずるい』

檜「じゃあなんで咲本は俺と2人で遊ぶのOKしてくれたの？」

『それは…』

今までスムーズに会話できてたし、むしろ私の方がリードしてたのに、突然私に矢印が向いて言葉に詰まる。

嬉しかったから。

檜山くんのことが好きだから。

なんて、ここで言えない。

映画が見たかったからという本心とは少し違う理由を口に出す手前、スピーカーから檜山くんの声がした。

檜「俺、今まで女の子と2人きりで遊んだことないよ」

その言葉に、私の心臓が大きな音を立てた。

檜山くん、そんなこと言われたら普通の女の子は期待しちゃうよ。

『…それは理由にならないよ』

檜「うん、分かってる」

なんで檜山くんは、そんな冷静でいられるの？

私はこんなにドキドキして今にでも心臓が爆発しそうなのに。

本当に檜山くんは、なんとも思ってないの？

檜「咲本は何？OKしてくれた理由」

『…映画、見たかったからだよ』

檜「…そっか」

2人に訪れる沈黙は、私の心臓の音をより引き立たせる。

檜山くんが私を映画に誘ってくれた理由が、本当に映画を一緒に見たかっただけなら、やり場のない私のこの気持ちはどうすればいい？

勝手に期待して、舞い上がって、嬉しくなって、落ち込んで。

感情がこんなに忙しくなるなんて思わなかった。

恋するってこんなに大変なの？