シークレットノート【檜山光成】 (ページ37)

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家の近くにある公園まで来たところで、ここでいいよと言ったのに、ちゃんと家まで送ってくれた。

『ごめんね、家反対なのに』

檜「全然。気にしないで」

『檜山くんも家帰ったら連絡してね』

檜「分かった。ありがとう」

暗闇の中でも変わらずニコッと笑う檜山くん。

今日1日、檜山くんと2人で遊びに行けてすごく楽しかったし、より檜山くんのことを好きになった気がする。

次は、いつあるのかな。

映画の続編が公開されたときだけ？

そうじゃなくて、続編の映画じゃなくて、檜山くんとまた別のところに行きたい。

だからまた2人の機会があればいいなって。

ただそれだけ。

私はそう思ってるけど、檜山くんはどうなのかな。

檜「入んないの？」

『あっ、うん、入るよ。檜山くん見送ってから』

檜「大丈夫だよ。冷えるから入りな？」

檜山くんは私が家の中に入るところまでが送っていくの解釈だったらしい。

なんかちょっと恥ずかしくて、でも私が家に入らないと檜山くんは帰らないだろうし。

お礼だけは言った方がいいと思って、最後に言葉を繋ぐ。

『あの、檜山くん』

檜「なに？」

『映画、誘ってくれてありがとう』

檜「こちらこそ。ワガママ聞いてくれてありがとう」

『あと…』

檜「あと？」

『…檜山くんのこと、もっと知りたい』

言ってしまった。

これ、誤解生みそうだよね？やばい、どうしよう。

檜「えっ」

『いや、あの、知りたいっていうのはそういう意味じゃなくて！友達として！仲良くなりたいなっていうか、その…』

焦ると出る饒舌も、檜山くんを前にすると一気に語彙力がなくなる。

もっと誤解を招きそうな気がして、必死に頭を回転させて言葉を見つける。

今の私はきっと顔が真っ赤。

見られたくなくて手で顔を隠すと、その手をパッと横に移動させられた。

檜「友達としてじゃなきゃ、ダメ？」

檜山くんが前に1歩踏み出しただけなのにグッと距離が縮まった気がして、また顔が熱くなる。

友達としてじゃなきゃダメって、どういうこと…？

私の目の前にいるのは、いつもの優しい檜山くんでもなく、もちろん嫌悪感を抱いた檜山くんでもなく。

彼の心情は読み取れないけど、まっすぐに私を見てくれていることだけは分かる。

惹き付けられて、より目が離せなくなって、檜山くんの表情がふっと柔らかくなるまで声も出なかった。