シークレットノート【檜山光成】 (ページ35)

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土曜日。

お昼前に集合することになって、ご飯を食べてから映画を見て、夕方には解散。

前日に全部のクローゼットの扉と引き出しを開けて、ベッドの上にありとあらゆる服を広げ、あーでもないこーでもないなんて言いながら選んだ服。

自信はないけど、年相応の服装にはなったと思う。

でもやっぱり少し不安で、ベージュのワンピースの裾を軽く持ち上げながら待ち合わせの駅に向かう。

ベージュって、地味だったかな…。

これでもきれいめな方を選んでみたけど、檜山くんの好みじゃなかったらどうしよう。

待ち合わせの広場に着いてスマホを見ると、檜山くんはもう着いてるみたい。

今週一緒に帰ったときに、ついに連絡先を交換した。

周りを見渡すと、噴水の近くにあるベンチで座っている檜山くんらしき人が見えた。

うそ、あれ檜山くんだよね？

私服かっこよすぎない？

そんな檜山くんにすでに心を射抜かれてドキドキしていると、私の前に1人の見知らぬ男性が現れた。

「おねーさん、1人？」

金髪、ピアス、ネックレス、指輪、首元のタトゥー。

アニメでしか見ないようなチャラすぎる人が、私の前でニコニコと笑っている。

決して鈍感ではないから分かるけど、俗に言うナンパだ。

無言で後ずさりすると、当たり前のように近づいてくる。

なんで私？どう考えても系統違うじゃん、もっとギャルな子捕まえなよ。

手首を掴まれそうになった次の瞬間、後ろから強い力で体を引き寄せられた。

檜「何か用ですか」

声のする方を振り返ると、さっきまでそこのベンチに座っていたはずの檜山くんがいた。

いつも綺麗で優しい表情をしている檜山くんは、今だけは嫌悪感に包まれていた。

「なんだ、男いるじゃん」

つまんなそうに帰っていくナンパ男が人混みに紛れて見えなくなると、体にわずかにあった温もりがスッと消える。

檜「大丈夫？」

『私は、大丈夫』

檜「変なとこ触られたりしてない？」

『うん、大丈夫』

さっきとは別人みたいに、あまりにも心配そうな目を向けてくれるから、思わず笑みがこぼれる。

きれいめっぽいけどカジュアルさが残るコーデの檜山くんは、制服と違ってカッコ良さが増している。

そんな檜山くんに助けられたんだと思うと、また脈拍が速くなる気がした。