シークレットノート【檜山光成】 (ページ34)

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修学旅行も無事に終わって、今年の行事はテストだけになった。

テストまではまだまだ時間があるけど、行事に向けてのモチベーションがないから、最近のみんなは基本的に気だるげ。

昼休みと放課後を求めて睡魔と戦いながら授業を受けていると、隣から手紙が回ってきた。

いつものように綺麗な顔でニコッと笑う。

耐性なんて付くわけないから、ちゃんとドキッとする。

このあと、さらにドキッとする文字が並んでいるとも思わずに。

【今度の土曜日、予定ある？遊びに行かない？】

えっ、2人で？

さすがにそんなわけないよね？

だって檜山くんと2人なんてそんなの、耐えられるはずがない。

目が合っただけでドキッとするのに。

でも休みの日に檜山くんと一緒に出かけられるのは嬉しい。

【いいね行こう】

文面ではサラッと返してるけど内心バックバク。

調子に乗って2人で遊びに行くのかどうかも聞けない。

【映画は？ドラマの続編が映画化したやつ、今やってるじゃんドラマ観てた？】

【観てたよ私も行こうか迷ってた】

【決まりだな】

回ってきた手紙にどんな返事を書こうか、授業そっちのけで考える。

とにかく気になるのは、檜山くんと私の2人きりなのか。

そして、どうして檜山くんは私を誘ってくれたのか。

檜山くんは私のことをどう思っているのか。

これが聞けたら苦労しないけど。

結局返事に迷っている間に授業は終わってしまって、次の授業は人によって受ける科目が違う授業だった。

私は家庭科室に行かないといけないし、檜山くんは実験室に行かないといけない。

とりあえず授業に間に合うように教科書の準備をしていると、上から優しい声が降ってくる。

檜「誰か誘う？」

『あっ、うん。そうだね』

やっぱり2人きりなんかじゃなかった。

変に期待して舞い上がってた私が馬鹿だった。

そもそも映画を大人数で見に行くことってなくない？

少なくとも私はないけど。

そんなことを思っていると顔に出ていたのか、ぷはっと吹き出す檜山くん。

そして私に四つ折りの紙を渡した。

檜「誰か誘ってもいいよ」

檜山くんは微笑みながらそれだけ言うと、深田くんと一緒に教室を出て行った。

【ウソできれば2人がいい】

広げた紙に書かれてあった文面が、私の体温を一瞬で上昇させることも知らずに。