シークレットノート【檜山光成】 (ページ33)

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ただでさえすぐそこにネックレスが揺れる胸板があってドキドキするのに、顔を上げれば目の前に檜山くんの顔がある。

その事実だけで顔から火が出そう。

今まで以上に心音も速くて大きいから、こんなに近かったら檜山くんにまで聞こえちゃいそうで、必死に下を向いて隠す。

次は～新大阪～というアナウンスが流れ、早く着いてほしいという気持ちが強まる。

檜山くんも何も喋らないし、もちろん私から喋れるはずもない。

だってこの距離が本当に近すぎるから。

そんな耐性、どこにもない。

檜「まじでごめん、大丈夫？」

真上から降ってくる声量を落とした檜山くんの声に、大丈夫なわけあるか！と心の中で突っ込む。

けど檜山くんは何も悪くないから言わないし、この状況で声が出せるはずなかった。

心配してくれてるから、伝わるように首を縦にこくこくと振る。

アナウンスと共に、電車が速度を落とし始める。

この駅も降りる人の方が多そうだけど、ドアから遠い場所にいたから出る方が大変そう。

この人混み、抜けれる自信がない。

大阪に1人取り残されるのはさすがに嫌だ。

…服なら、少し掴んでも大丈夫だよね？

身動きが取りずらい中、目の前にある檜山くんのシャツの裾を少し掴む。

すぐに気づいた檜山くんは、私の名前を呼んだ。

檜「咲本？」

『ごめん、はぐれるの、嫌だから…』

好きな人を前にして、なんてことを言ってるんだという自覚は大いにある。

本当にごめんなさい。

それでも檜山くんと離れたくないのは事実だから。

電車が止まるタイミングより少し前、檜山くんの自由な方の手が私の手首を優しく掴んだ。

檜「大丈夫。俺の手、離さないでね」

掴んでいた手が下へと移動され、檜山くんの大きな手が私の手のひらを包み込む。

同時に電車のドアが開き、降りる人のあとを追うように人混みを縫う檜山くんに引っ張られる。

やっとの思いで電車を降りても、ホームには溢れんばかりの人で、檜山くんの手を離さずにはいられなかった。

人混みに流されるように歩いてるけど、多分そっちは集合場所と反対だったはず。

先生が間違えるなよって忠告してた。

その時、握っていた手が強めに引っ張られ、エレベーターの近くの空いてるスペースで軽く抱きとめられた。

悪気なく頭が胸板に触れてしまったわけだけど。

…ねぇ、檜山くん。

私と変わんないくらい心臓の音、速いよ。