シークレットノート【檜山光成】 (ページ29)

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檜山くんのことが好き。

その言葉を頭の中で繰り返し、その事実を自分の中で処理することで、身体中の体温が一気に上がった気がした。

人を好きになるってこんなに落ち着かないの？

普段はずっと恋バナを聞くだけだったから関係なかったし、ちょっとした胸のトキメキ程度だと思ってた。

けど全然違う。比にならない。

ついに自覚してしまったから、これから檜山くんとどうやって接すればいいか分からない。

そんなことをスタッフルームでぶつぶつ言っては青木くんに笑われてると、休憩時間が終わった。

青「ごめん、事務作業やっといてって言われたの忘れてたから1人で表出てくれる？」

『分かりました』

青「忙しくなったら呼んで」

この時間帯で上がるパートの主婦さんと交代して1人で表に出る。

店内にお客さんはいなくて、今のうちにケーキや焼き菓子、梱包材の在庫をチェックしていると、入口のベルが鳴った。

『いらっしゃいませ』

メガネをかけた同い年くらいの男の子が入ってきて、焼き菓子を見つつケーキのショーケース前にやって来る。

…なんか、誰かに似てる？

メガネのふちが邪魔してよく見えないけど。

あの、と言って顔を上げた彼は、私の名前を口にした。

檜「咲本？」

『檜山くん…？』

似てると思ったら、檜山くんだった。

心臓がドッと大きな音を立てる。

檜「ここでバイトしてたんだ」

『うん、そう』

檜「妹が気に入っててさ。毎回同じの買ってくるんだよ」

『そうなんだ』

檜「じゃあ、フルーツタルト2つください」

『分かった。他は？』

檜「大丈夫。ありがとう」

『先にお会計、お願いします』

ニコッと笑う檜山くんに、心臓が爆発しそうになる。

今まではなんとも思わなかったのに、意識し始めるとこんなに違う。

会話も続けられないし、ちゃんと笑えてるかどうかも分かんない。

お会計をしてもらって、レジ下におる梱包材を取るためにしゃがんだタイミングで深呼吸。