シークレットノート【檜山光成】 (ページ25)

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檜「ごめん、教室行ったら咲本追いかけてって言われて。なんかあった？」

『なんにもない、けど』

檜「本当？今から文化祭の準備手伝いに行くけど、一緒に行く？」

『あ、ごめん。帰らなきゃいけなくて』

檜「そうなの？じゃあ俺も帰るわ」

『えっ』

檜「急ぎ？」

『ううん、違うけど』

檜「一緒に帰ろ。荷物持ったまま走ってきて良かった」

檜山くんはバッグを肩にかけなおして、額から頬を伝って流れてきた汗を手で拭った。

直接話すと、こんなにドキドキするんだ。

いつもは手紙とかメモで話すことが多かったし、毎週水曜日一緒に帰ってた時も横に並んでたから目を合わせることも少なかった。

だからこそ、微笑む檜山くんをいざ目の前にしちゃうとドキドキする。

脈拍の速さは檜山くんのせいだけど、顔に集まる熱は夏の熱さのせいにさせてよ。

じゃないと、私の心が追いつかなくなる。

真夏の太陽が照りつける中、学校を出て並んで帰路につく。

檜「てか今日暑すぎない？」

『日差しやばいよね。部活お疲れ様』

檜「咲本こそ文化祭準備お疲れ様。どっかでアイス買わない？」

『いいね、あり』

檜「さすがに今日は耐えられない」

『熱中症とか気をつけてね？』

檜「うん、ありがとう。でも俺、体は丈夫だから。咲本は優しいね」

『そんなわけない！檜山くんの方がずっと優しいよ』

檜「そう？」

私の優しさなんか、檜山くんに比べたらずっと小さい。

社交辞令にすぎないのに、ちょっと動揺して食い気味だったし、声が裏返りそうになった。

…あれ、私もしかして今、檜山くん本人に優しいって言っちゃった？

今までに直接言ったことあったっけ？なかったよね？

あれ？どっち？

1人脳内でプチパニックを起こしながら信号を渡る。

檜山くんは前を向いて、どこか嬉しげな表情を浮かべていた。

流れる汗ですら爽やかなものに見えてしまうくらい、やっぱり、綺麗な人だ。

そんなことを思いながら見つめていた私に気づくと、檜山くんは首を傾げた。

檜「なんかついてる？」

『いや、違う。顔、綺麗だなって思って』

檜「えっ」