シークレットノート【檜山光成】 (ページ21)

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翌日、朝の8時。教室には私しかいない。

昨日家に帰って紙を見たら、心臓が止まりそうになった。

もちろん、勘違いはしていない。

していないけども。

少女漫画をよく読んでた夢見る乙女タイプだから、そういう展開がいざ自分に回ってくると、頭が混乱する。

檜山くんにその気なんか一切ないだろうし、私だってない。

…はず。

いや、ない。

だってあんなに完璧な檜山くんだよ？

私なんかにそんなの、あるわけなくない？

なんだかソワソワしてしまって、教室内をぐるぐると回る。

後ろの黒板に落書きでもしようかな、なんてチョークを手に取ってみても、何を書けばいいか分からない。

単語帳を開いても、明日の授業の予習をしようとノートを開いても、スマホを触っても、なんにも頭に入らない。

...っていうか、私がこんなこと考える必要って、何？

これは檜山くんが人と仲良くなるための手段にすぎない。

だからこんなに考える必要なんてない。

なのに、急に教室のドアが音を立てて開いたことにビックリしたのも。

湧「おはよ。なんでそんなビックリしてんの？」

全部檜山くんのせいにしちゃいそう。

なんだ、元木くんか…。

湧「なんだよ。なんだ、元木くんか…って」

『あっ、えっ、声出てた？』

湧「全然出てた」

『ごめん。ボーッとしてたから普通にビックリして』

湧「ふーん？」

自分の席に荷物を置いて、檜山くんの席の椅子に座る。

体だけをこっちに向けて、これまたニヤニヤしながら私を見てくる。

この前と言い、その顔はなんなの？

『なんでそんなニヤニヤするの？』

湧「別に？面白いなーと思って」

『私が？』

湧「うん」

『どこが？』

湧「それは言わないけど。まぁ、なんかあったいつでも俺に相談しなよ」

『はぁ…』

今度はニヤニヤではなく、優しさがほんの少し見えた笑みをこぼして教室を出て行った。