シークレットノート【檜山光成】 (ページ20)

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もしかしたら、いや絶対、そうなるとは思った。

ただストレートに聞いてきたことにちょっとドキッとしてしまって。

『檜山くんが良ければ…』

檜「俺は全然」

なんて、また爽やかな笑顔を見せてくれる。

この人の笑顔は、いつ見ても飽きないくらいに綺麗だ。

檜「なんか地元が一緒って意外。全然分かんなかった」

『中学違うと分かんないよね』

檜「部活とか入ってなかったの？」

『美術部には入ってたけど、おばけだったよ』

檜「おばけ？」

『幽霊部員。みんなにおばけって言われてた』

檜「そういうことか」

なんのことか分かんなかった、と笑う檜山くん。

私が可愛いイラストのおばけみたいな手を作ると、真似して一緒に笑う。

気づけば駅前まで来ていて、ここからはお互い反対方向になる。

商店街の方は駅前みたいに賑やかなままだけど、神社の方は急に静かになって住宅地が現れる。

『私こっちなんだ』

檜「そっか、神社の方だもんね」

『うん。じゃあ、ばいばい』

檜「ばいばい。また明日」

微笑む檜山くんの顔が本当に綺麗で、初夏の日差しとどっちがどっちか分からなくなるくらい眩しかった。

つまり、かっこいい。その一言に尽きた。

背中を向けて十数メートル歩くと、足音とともに名前を呼ばれた。

檜「咲本」

振り返った目の前に、数秒前に見た整った顔。

檜「はい、手出して」

『何？これ』

広げた両手の中にそっと置かれたのは、四つ折りの紙。

いつも授業中に回したりしてるのと同じ紙だった。

何か分からなくて開けようとすると、私の両手の上から檜山くんの手がかぶさる。

檜「帰ってから」

『え、なんで？』

檜「なんでも」

『…開けていい？』

檜「ダメ」

そのまま片手で壊れ物を扱うように、私の手を軽くきゅっと握る。

両手が覆われるくらい檜山くんの手は綺麗で、大きい。

変わらず口角を上げたまま、ダメだよ、と念入りに言ってくる檜山くんの目線は、お互いの手元にあった。

『分かった。家で見るね』

檜「うん、そうして。じゃあね！」

一瞬だけ目が合った檜山くんは、くるりと後ろを向いて商店街の人混みに消えていった。

この時の私は、檜山くんの耳が真っ赤に染まっていたことなんて知らない。

【毎週水曜日、一緒に帰ってくれませんか？】

こんなことが書かれていたことも、もちろん知らない。