シークレットノート【檜山光成】 (ページ1)

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Aside

先生が黒板を書こうと背中を向けた時、隣の席から細くて長い指が伸びてきて、トントンと机を叩かれる英語の授業中。

ちらりとその方向を見れば、折りたたまれた紙を渡された。

学級委員の檜山くんが手紙を回してくるなんて珍しい。

一応授業中なので口パクで「なに？」と聞けば、紙を指さして「見て」と口パクで返された。

開けてみると、お世辞にも上手とは言えない絵が4つと矢印が並んだ絵しりとり。

余白が残っているのを見る限り、恐らくこの時間はまだまだこれからっぽい。

そんな余白に、絵しりとりでは禁断の文字が書かれてあった。

【ちょっと付き合ってあげて】

絵しりとりに？

檜山くんの方を見ると、眉毛を少し下げながら小さく手を合わせて口パクで「ごめんね」と言ってきた。

そしてそんな檜山くんの隣で私の方をニヤニヤしながら見ている3人の男子。

3人とも私に手を合わせて「おねがい」とか「書いて」とかを口パクで訴えてくる。

戦犯はあそこだろう。檜山くんが付き合わされてるって感じかな。ついでに私も巻き込まれてる。

どうせ男子のちょっとしたイタズラだろうし、1回くらいならと思って、しりとりが続く絵と矢印を書いて檜山くんに渡した。

絵に自信はないけど、紙を開いた檜山くんの反応的に伝わったみたい。

頭を切り替えて授業に集中していると、数分後にまた同じ紙が回ってきた。

また？と思って檜山くんを見ても、ノートを取っていて気づいてない。向こう側にいる男子も。

紙を開けば、新たに5つ増えている絵。

さっき檜山くんが残した文字はなく、絵しりとりを止める拒否権がないことは明らかだった。

トマト、トイレットペーパー…これは、何？ピーマンみたいな形してるけど、しりとりの順番的にパプリカ？

自分も人のこと言えないけど、画伯だらけ。

パプリカと私の中で決めて、しりとり続きを描く。

先「おい！なに手紙なんか回してるんだ！」

檜山くんの机にそっと置いた時、こちらを振り向くタイミングと被ってしまった先生の怒鳴り声が教室中に響いて、ビクッと肩を揺らす。

1番後ろの席だから、周りのクラスメイトが一斉に私の方を見た。

やばい、怒られる。