24 ページ24
謙「…A」
『なに？』
謙「…ごめん、なんもない」
『うん…』
多分謙杜は、私に気を使ってくれている。
本当は会いたいはずなのに、昨日の今日だからむやみに外には出そうとしない。
たとえ、謙杜がそばにいても。
私だって、会いたいのに。
会って、たくさんハグして、くっついて。
クリスマスに、私たちが望んでいるカップルは出来なくて。
近くて遠いって、こういうことなのかな…？
『…謙杜』
謙「ん？」
『…呼んだだけ』
謙「…ふ、可愛い」
会いたいのに、なんで。
会おうと思えばすぐに会えるのに、なんで。
謙「A」
『なに？』
謙「…俺、近くにおるんよ」
『え…？』
謙「買い物してて、たまたま近く通って…」
『会いたい』
謙杜の言葉に、自分の気持ちを被せてしまう。
相手の言葉を遮ってまでそんなことを言ったことがあんまりないから、謙杜も向こうで驚いていた。
謙「うん、俺も。…やから、ちょっとカーテン開けてみて」
『カーテン？』
スマホを耳に当てたまま部屋のカーテンを開けると、向かいの家の部屋の明かりがついていた。
その視線を下に向けると、スマホを耳に当てたままこちらを見上げる謙杜。
ほんの少しのスマホの明るさが、謙杜の横顔をうっすらと照らす。
『なんで…』
謙「やから、たまたま通りかかったんやって」
紙袋を持った手を振る謙杜に、私も手を振り返す。
謙「なんか、ロミオとジュリエットみたい」
『あんまり詳しくない…』
謙「嘘やん！？」
俺結構好きやねんけど！と言いながら笑う謙杜。
謙「もう…体あっためて、はよ寝や？」
『まだ8時だよ』
謙「良い子は寝る時間や」
『なにそれ』
謙「Aがカーテン閉めるまで動かんからな」
『いいよ？別に』
謙「俺帰られへんくなるやん！？」
『このままでもいいよ』
謙「凍え死ぬわ！」
凍え死んでもらっては困るので、はいはいなんて言いながらカーテンを閉める。
謙「じゃあね、おやすみ」
『おやすみ』
謙「…メリークリスマス」
電話を切る直前、謙杜がそう言った気がした。
外が気になってカーテンを開けると、謙杜がスマホをポケットに入れながら、ちょうど角を曲がろうとしていた。
その手に、さっきまで持っていた紙袋は無かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 645人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「なにわ男子」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
檸檬の妹(プロフ) - 完結おめでとうございます！ずっと前から読ませていただいて、作品がとても面白かったです！アナザーストーリーもしっかり読ませていただきます！ (2022年12月4日 11時) (
レス) @page50 id: 1fb600e1a2 (このIDを非表示/違反報告)
紗奈 - 下書き、頑張って！！応援してます！！ (2022年8月16日 9時) (レス) @page27 id: 64ad605d1b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らずべりぃ | 作成日時：2022年7月1日 21時
