1話 ページ3
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時計の針の音が鳴り響く部屋。
シャーペンを握り机に向かって、約二時間が経ったと思われる。
「本当いい加減にしろよ!」
「それはこっちの台詞よ」
階下から聞こえてくるのは、Aの両親が怒鳴る声。
この二人の喧嘩が始まったのは、Aが中学校に上がる頃。その時から二人の喧嘩は絶えなくなっていった。
近々離婚も考えているらしい。
そんなことはお構い無しに
何かを知らせるサイレンが低く部屋に響いた。
朝から何も口にしていない所為か、腹の虫が限界を訴え泣きわめいたのだ。
Aは、誰も居ない部屋だと分かっているのだが、やはり恥ずかしいのか頬を僅かに染めていた。
「お腹空いたな」
ぽつり、と静かに呟く。
そんなAとは裏腹に、両親の怒鳴る声は徐々にヒートアップをしていき、近所迷惑になりそうなレベルになってきていた。
「うるさ」
Aは空腹に耐えきれず、階下に降りた。
降りたのはいいのだが、両親の怒鳴る声は上に居たときとは違いダイレクトにAの耳を貫く。
最初の頃は、喧嘩が始まる度に
「やめてやめて」
と、泣きわめきながら健気に両親の喧嘩を止めていたAだが、二年程経った今は慣れてしまい、鬱陶しく感じていた。
「ちょっと!Aからもお父さんが間違ってるって言ってよ!」
「いやだ」
「いやだ、ですって?Aの役立たず!貴方もお父さんと同じ本当に邪魔な人間ね!産まなきゃ良かったわ」
勝手に産んどいて酷い言い草だな。そんなことを思いながら、Aはお腹を満たすべく両親の前から去っていった。
キッチンに来たけれど、最近母親は家事を一切やらなくなり、買い物などはもっての他家には何も無い。あるとすれば、水のみ。
A自身、自分で買い物に行きたいのだが、お金などくれる筈もないので買い物へ行けず仕舞いだ。
「はぁ…腹減った」
空腹により倒れてしまいそうだ。キッチンの壁に寄りかかりながら座り込む。
両親の喧騒がまたも酷くなってきた。多分Aがさっき反抗したことによって、母親がキレたのだろう。
耳を塞ぎたくなる程の剣幕に苛立ちを覚え、部屋に隠りたかったのだがまた両親の前を通るのも嫌なので、ここで蹲る他無かった。
体育座りをし、顔を膝に埋め蹲る。暗闇のなか両親の喧嘩を音楽にしながら暫く時間が経つと睡魔が襲ってきた。
ここで寝るのもあれだけど、今更動くのも面倒だと思い、静かに重くなった瞼を閉じた。
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幸福林檎 - 心理描写もすごく上手くて、大好きな小説です!初めてとは思えない!応援してます(^ ^) (2018年8月21日 23時) (レス) id: c84f1b316a (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 天岸悠樹さん» はい!お願いしますね! (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
天岸悠樹(プロフ) - らそまるさん» やったあ!完成したら報告します! (2018年7月30日 3時) (レス) id: 2eadb8d21d (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 放射性アイソトープさん» 態々ご指摘ありがとうございました。作者らそまるの勘違いにて起こしてしまった間違いです。本当に感謝しております。 (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
らそまる(プロフ) - 黒羽さん» ほんとうですか!?それはとても嬉しいですね、これからもお付き合い願います (2018年7月30日 3時) (レス) id: b11db4f032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らそまる | 作成日時:2018年7月27日 22時