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100話 ページ4

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「探偵社の仕事は一人での仕事も多いが、軍警との連携を取ったり、社員同士で合同で任されたりすることもある。だが、お主はそれに数ヶ月は誘われていない。他の社員は期間が空いておっても二ヶ月くらいなのになお主の仕事は社員を傷付けてしまう可能性がある。そう考えておるのだろう?」



それはそうだった
彼女はここ数ヶ月一人での仕事をすることが多かった
それ以外は事務作業を主にしている
彼女に人員を寄越せば、彼女自身も探偵社員の誰かも彼女の犠牲になるかもしれない
Aはそこを気にしていたのだ
そして、そこを上手く突かれた



「お主の仕事捌きは本当に凄い。非常に効率が良くてコストも少ない。確実に結果を取っていく。矢張りこっちに欲しい人材じゃ。こちらに来るのであればお主がこちらの仕事に必要な人材も生贄も全て用意しよう。お主は人と話、作戦を考えるだけ。自分自身が手を汚すことはない。二度とない機会じゃ。人を殺さず人の上にマフィアが立つ。こちらより給料も良く、人との関わりだって多い。ある程度要求には応じてあげられる。どうじゃ?マフィアに来てくれぬか?」



紅葉の言葉には憐みや同情も混じっていた
彼女も嘗て光の世界を焦がれた故のその感情
最初から闇を受け入れていた中也や太宰とは違うのだ
中也が誘うにも、森が誘うにも持っていない言葉の説得性がある
光に焦がれ落ちたからこそ、彼女の未来がなんとなく判っているのだ



「きっとお主は素敵なマフィアになれる。蝶の様に羽で舞い、美しく、そして恐れられる、正にマフィアの為に生まれた人物になれる。偽りの光はいつだって身勝手じゃ。お主の中の考え、常識、価値観は決してその身勝手に順応したものではない」



紅葉はAの手を握る
その手は無理矢理引く様に力を入れられた物ではない
優しく、包み込む様に握った
彼女が勧誘しているのは、勿論マフィアの為
だが、マフィアの人間の中で彼女が一番Aを勧誘するのに向いている
彼女のことを心から理解しようとし、愛でようとしたから
中也にもその心はあるが、その経験がある者とない物では根本的に理解できるかできないかが変わる



「その身を焦がす前に____マフィアに来てはくれぬか?鏡花もお主も、この居場所が一番じゃ。マフィアは喜んでAを歓迎しよう」



Aは紅葉と目を合わせられなかった
彼女は、もう既に光に焦がれかけていたのだ



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作者名:らるらきら | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2023年10月25日 14時

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