111話 ページ17
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「頼まれごとで…こんな事態で探偵社に協力できなくて、本当に申し訳ない……多分、一週間後には探偵社に戻るから」
「そうなんだ…Aちゃん、服装いつもと違うね」
「でしょ。特にこの頭のリボン、気に入ってるんだ」
Aは後ろに目を向ける
後ろには久作がいることを確認した
Aは久作においでおいで、と合図をする
「あ、紹介しますわ。列車の中でAさんと一緒に居た子なんですけど…」
ナオミが其処まで云うと、久作は転けるフリをして敦にぶつかる
Aは一歩後ろに下がった
「籠のなぁかのとぉりぃは」
かごめかごめを歌いながら久作は自身の服の袖を捲る
其処には鉄線が包帯で巻き付けられていて、久作の腕に傷を作っていた
血を流す久作を見て敦が目を見開く
「後ろの正面だぁれ?」
さあ、ここからがこの仕事の本番だ
Aは冷めた目でその場を見ていた
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樋口は太宰に“Q”を放ったことを告げる
Qは、マフィアの精神操作の異能力者
Qを傷つけた者は幻覚に精神を冒され、周囲を無差別に襲う
その異能が発動する契機は詛いの根源たる人形を破壊すること
そして、その異能が掛かった者____受信者は躰に掴まれた様な痣が浮き上がる
太宰はそれを警戒させれば今からでも充分に間に合うと……でも、違った
「此処にきた時……『私を守る為』と云ったね?」
____「茶番ではありません。貴方を守る為です」
樋口は先程太宰にそう云った
つまり、太宰に何かしら降り掛かる害から“太宰だけを守る為”に太宰とここでお話をしていた…
ここで太宰はハッと何かに気付く
「…しまった……!」
慌てて敦達の元に急ごうとする太宰
だが、樋口がそれを止めた
「待ってください。私は首領からの伝言は二つだと言いましたよね」
「ああ、そうだが、今そんなの」
「その現場に、優利井Aが居ます____マフィアの、Qのお手伝いとして。彼女はもう、マフィアです」
太宰は目を見開く
Aが傷付くこと、そして、Qを手伝う為に動いているのを敦達が見る
それが何を意味するか
Aを庇った太宰だが、それは彼女の居場所を完璧に失わない様にする為
だが、それが見られれば
太宰は走る
今行われていることを止める為に
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