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✳︎触れたい ページ1

◯中島敦



 「……。」


探偵社の資料室で偶然居合わせた二人。
何かを探して真剣な表情をする貴方に見惚れて、不意に書類を捲るその白く華奢な手が目に入る。


 「わっ…!す、すみません!」


『触れたい』という思いに自然と体が動いてしまって、その手に小さく指で触れてしまった彼。
気付いた瞬間、反射的に手を引いてしまった。


 「その…あまりにも綺麗で、触りたくて……つい…」


恥ずかしそうに目を逸らすけれど
いつ迄もその手にある“温度”に触れられるように、貴方を護りたいという思いが強くなっている。









◯太宰治



 「ふふ、Aちゃんは相変わらず綺麗な肌をしているねぇ」


業務中にも関わらず、暫く頬に触れたり貴方の手をつぅっと撫でたりする彼。退屈で平和な日のちょっとしたお遊び。
彼の大きくて触り心地の善い手が離れ難い気もするけれど、

それでも業務中であることは変わらないので
ほんの少し咎めてみる。



 「私に触られるのは嫌かい?」


 「なら交換条件として私に自由に触れる権利を与えよう。
ほら、今なら私を好きなように触っても良いのだよ?」



いつもふらりと川へ向かう普段触れない彼への好奇の機会(チャンス)
けれどふと気付く。彼の身体には包帯が巻かれているので包帯越しでしか触れない。首筋でも触るか…それとも軽く頬でも抓るか…。









◯江戸川乱歩



 「ははっ!Aの頬ったらもっちもちだねえ!」


両手で包む様にもちもちと触れる彼。
先程まで冷えたラムネ瓶を持っていたので何処か手も冷えていて。
あまりにも満足気な笑顔なので怒るにも怒れないし、探偵社の皆も同情と微笑ましさの笑顔で見守っている。



 「名探偵に触られるだなんて貴重な体験だよ〜?」



貴方の言いたい事が顔に出ていたのかそんな事を言い出す。
冷えた手も貴方の体温によって温かく染まった頃、漸くパッと手を離した。


 「これからは定期的に触ろうっと」

〃→



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作者名:花提灯 | 作成日時:2024年1月30日 13時

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