季節外れの雪って9人以外使いこなせる人いなくない？_△ ページ12
美緒 side
今日の台本を手に持つけど、見る気にはならなくてスマホのロックを解除する。
スケジュールアプリを開くと、最後に真緒と話したのは１ヶ月前だったことに気づく。
私たち双子は二卵性と言うこともあってか、
双子にしては元々冷めていたが、
ここまで話さないのは初めてのことだった。
だからといって、
あそこまで毎日忙しそうな真緒に連絡はできなくて
このままだと本当にヤバいよなぁ
なんて呑気に考えている自分がいる。
私がヤラカシた後のメンバーとの隔たりも
すっかりなくなって、
元どおりの距離感に戻ることができたから
精神的にも余裕があるのに。
今日の仕事だって、
Snow Manの岩本くん、翔太くん、目黒くん、ラウールくんの4人が主演のドラマの撮影で、
真緒みたいに直々にオファーがきたとかじゃなくて
いわゆるバーターだし、
スケジュールも私の方が断然余裕があるのに。
真緒とのことは放置して
本当に私はどうなりたいんだろう。
最近はそんなことばかりが頭の中で渦巻いている。
大学に通うようになって、
意識が高い一部の子たちは1年からインターンにいって
将来に対して真剣に考えてるのに、
私は一応アイドルをしていて
バイトだってしないでいる。
つまりは一般社会というものを何も知らないでいる。
芸能界という社会はなんとなく知っているつもりだけど、
この業界に入ったのだって自分で希望して入ったんじゃなくて、
真緒にお金が返したくて始めただけで、
こういう仕事がしたいだとか
誰々みたいになりたいだとか
具体的な夢は何もなくて、
自分が芸能界でどうなりたいだとかのビジョンも何もない。
グループのみんなは
“デビュー”という夢に向かってガムシャラに頑張ってるけど、
私はそんなことはなくて、
現に真緒がデビューと聞いて
悔しいなんて感情は一切なかったし、
真緒の実力からすれば当然というのもあったけど、
本当はただ真緒と一緒に居たかっただけなんじゃないか？
とまで考えている。
真緒がJr.からいなくなって、
女が私だけになって、
もうどうすればいいのかわからなくて、
でも誰にも迷惑をかけられなくて、
相談もできなくて、
一瞬辞めようかな、と思ったけど、
これ以上メンバーに迷惑をかけたくなくて、
もういっそ消えて
元々存在さえしなかったことになってしまえればいいのに、
なんて、できもしないのにね。
渡「おい！」
美「……はい？」
．
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作者名：m9 | 作成日時：2021年5月17日 11時
