君が1番、とかふざけんな【灰谷蘭】

浮気.21 ページ21

蘭「偶然ですね、Aさん」
貴「灰谷さん…偶然、ですね」

白々しく偶然ですね、なんて言ってみる
Aもそれが嘘だってわかってるから

微妙な反応をするが
拒絶はされてないみたいだ

蘭「お疲れ様です。今日は予定ありますか？」
貴「…特に何もありませんけど…」

蘭「一緒にディナーどうですか？」
一気に距離を縮めすぎだろうか

でも本当は知ってるのに
知らない、他人のフリするのには限界がある

互いに不自然になってしまうのは
仕方の無いことだと思う

貴「ディナー、ですか…」
蘭「えぇ、近くによく行くレストランがありまして」

Aとも何回か行ったことがある
雰囲気が好きだ、って

そう言ってたAの笑顔を
今でも鮮明に覚えてる

蘭「どうでしょう」
連絡先も交換してるんだから

ディナーくらい頷いてくれねぇかな…
少しだけ期待しながら返事を待つ

貴「……今日はごめんなさい」
蘭「…そうですか…なら明日とか…」

貴「ごめんなさい」
俺の目をしっかり見ながら断る

…流石にガード硬ぇわな…
蘭「分かりました。家まで送ってもいいですか？」

貴「……それなら…」
やっと頷いてくれたAに頬が緩む

蘭「じゃあ、行きましょう」
そう言って歩き出す

俺から数歩距離を取って隣を歩く
…警戒、というかなんというか…

体の距離はもちろん
心もきっと離れているのだろうと思ったら

急に悲しくなった
…原因は、俺なのに

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