35歳、初恋。＜SN＞ (ページ10)

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眼鏡ページ10

黒のシーツに深い紫色の掛け布団
遮光カーテンなのか、一切光は入っていないみたいだった。

ベッドサイドの間接照明がほんのりと照らすだけの室内。
…二つある枕が妙に生々しかった。

でも…二宮っぽくない、部屋だな。
たぶん、松本さんの趣味…なんだろう。

枕のそばまで近付くと、二宮の顏は柔らかい光に照らされていた。

「…肌、綺麗だな。」

足と同じように真っ白のほっぺた。
キズ一つない肌は柔らかそうで、気付いたら手を伸ばしていた。

「…いつもこんな風に触られてるのかな。」

急に二宮を大切そうに抱えていた松本さんが頭をよぎった。

…俺、何してんだ。

焦りよりもひどい虚しさに襲われて、やっぱり柔らかかったその肌から手を離した。

体調の悪い二宮を起こすこともできなくて、ただただ寝顔を眺めつづける。

「…寝てる時もかけっぱなしなのか。」

二宮の顔は、相変わらず前髪と眼鏡で隠れていた。
…どんな顔してるんだろ。

「…フレームが曲がったらいけないから。」

そう、自分に言い訳して。

眼鏡の上にかかっていた前髪をはらうと、サラサラと流れた。
銀色のフレームに手をかける。

緊張なのか、どうしてか手が震えた。

.

「…だめ。」