35歳、初恋。＜SN＞ (ページ26)

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おやすみなさいページ26

だけど言えなかった

俺は教師で担任で、そんなこと…していいわけがない、という理性と。

…でも一番は、初めて見た、フワッと笑った二宮の顔だった

学校ではもちろん、家に来てからも一度も見たことがなかった

挑発的な言葉と笑顔が、拒絶していた。
これ以上踏み込んでくるなと…

ソファにさえ座らず、ラグの上にちんまりと正座して小さな手でマグカップを包み込んでいる。

湯気を立てていたホットミルクは一口も飲まれることなく、コトリと机の上に置かれた。

「…もう、帰りますね。」

「未成年をこんな時間に帰らせられるわけないだろ。今日は泊まっていきなさい。」

さっきまでは、泊めてくれと身体を差し出してまでいたのに…
家に帰れないからあんなことしたんだろ？

きっと二宮は相葉の家に行くんだろう。

でも、相葉は実家のはず。もう深夜だし、相葉のご家族にも事情が事情だから…説明できない。

「遠慮しなくていいから。もう親御さんも寝てるだろ？」

琥珀色の瞳でジッと見つめられたから、今日は絶対に泊まらせる、と強い意志を込めて見つめ返した。

「……ありがとうございます。
じゃあ、今晩だけお世話になります。」

「あぁ。二宮は俺のベッドで寝ろ。
そこのドアの先が寝室だから。」

よかった…もっと、抵抗するかと思ったけど…
生徒をまさか自分の部屋に泊めることになるなんて…しかも、にのみや、か。

「もう、寝ますね。
おやすみなさい、先生。」

「おやすみ。」

…おれ、加齢臭とか…大丈夫だよな？

布団、日曜洗っとけばよかった…

寝室に消える二宮の細い足を眺めながら、
結構後悔した。