世界一 ページ2
「…はい、いいよ？智。」
多分ここは、リビングのドアの前。
目隠しされてても、生まれたときから住んでる家。
大体どこなのか歩いててわかる。
…いったい、和は何がしたいんだろう？
鈍い俺にはわからない。
和にゆっくりと目隠しを外される。
「…せぇの…！」
目隠しが外れたのに、真っ暗な視界。
電気は１つもついていない。
暗がりのなか、小さく聞こえる和の声。
パァーンッ！！
「智っ、たんじょーび、おめでとうっ！！！」
「………へ？」
出たのは、間抜けな声だった。
キラキラ、キラキラ、光に反射したテープが
踊りかかる。
チカチカ、チカチカ、いきなりついた電気が眩しくてよく見えない。
…だけど、体に感じるのは今日初めての和の体温。
そうだ。
.
今日は、俺の
.
「……智、うれしく、なかった…？」
.
「…ううん、……すげぇ、嬉しい。」
誕生日。
「ほんとっ！？」
俺のたった一言に。
本当に、心から嬉しそうに笑う和。
机の上には俺の好物だけがズラリと並んでる。
壁は輪っかや折り紙で綺麗に装飾されてる。
「…これ、全部和が1人でしたの…？」
俺に隙間なく密着してる和を少しだけ引き剥がして、薄茶のビー玉みたいな目を覗き込む。
「うん……」
照れたようにはにかんで、少し目線を下に向ける。
和が恥ずかしい時のいつもの癖。
「和……」
「な、なに…？」
柔らかなほっぺたをムニュッと掴むと恥ずかしそうに、嬉しそうに顔を上げる和。
「……大好きだっ！！！」
世界一可愛い俺の弟が祝ってくれた、
世界一幸せな俺の誕生日。
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作者名：ララ
| 作成日時：2016年11月26日 14時
