19話 ページ21
「ぎゃああああああああああ！！」
地下への階段を下りていると、大きな叫び声が聞こえた。
新人の隠などはこれだけで驚いたりするがこんなのは日常茶飯事だ。
大方、鬼に鎮痛薬をうたなかったのだろう。それで薬の副作用かなんかで起きる体の痛みに鬼がもがき苦しんでいるのだ。
部下がいる前では平然としているが一人の時この叫びを聞くと「自分がああならなくてよかった」と思ってしまう。
Aは地下へと続くこの道の壁に取り付けられている鏡の前で止まり、向こうの自分を見つめた。悪寒がして、羽織の上から腕をさすった。
…私は鬼。
中途半端だというのはそのせいだ。私は半人半鬼。純粋な人間じゃない。
本当ならば私こそ実験の対象になるべき存在だ。鬼よりもまがまがしく、醜い存在。
母さんは鬼だった。美しく、強かったらしいが誰も食べなかったと鱗滝さんは言っていた。
父さんは鬼殺隊の水柱だった。勇ましくて凛々しい人だったらしい。
そんな二人が出会って、恋をした。
まぁ、普通なら有り得ないことだからうちの両親は相当変人だったんだろう。
別に出会ったことを恨んでなんかいない。両親自体も恨んでない。むしろ生んでくれて本当にありがたいと思ってる。
でもずるいなぁとは少し思う。
二人は鏡のように、こちら側とあちら側で完全に分かれた世界で出会った。まるで鏡の中の自分と手を合わせるように。
では私は？
私の居場所はこちら側でもあちら側でもない。鏡の、面なのだ。
どちらに傾いても生きていけるような裏切り者。誰からも本当に信じてもらえない存在。
私の行く道はどこなのだろう。
こちら側の人間があちら側の鬼に手を、刃を伸ばしてもそれはことごとく断ち切れる。
こちら側の鏡の«面»は弱い。
なのにあちら側の鬼がこちら側の人間に手を伸ばせば簡単にその命を消せる。
あちら側の鏡の«面»は強い。
つまりは、人間である私は弱いという事。鬼であるワタシは強いという事。
でも私はこちら側にいたい。
鬼であった母さんがそうしたように。
誰にも言わずに一人で生きていくしかない。
あちら側を探るのも、最前線に立つのも、鏡の«面»である私にしかできない役目。
全うせよ、
己の命と人生をかけて。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 152人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
らぴすらずり★(プロフ) - 銀狐的なさん» ありがとうございますうううっ！！！読んで下さり、それに加えてコメントも…泣きます(ToT)最近更新出来ていなくて申し訳ないです…どうぞこれからもよろしくお願いします！！！ (2019年8月14日 7時) (
レス) id: b227a58786 (このIDを非表示/違反報告)
銀狐的な - 面白い！イラスト欲しいです。 (2019年8月11日 6時) (レス) id: c9fba58961 (このIDを非表示/違反報告)
らぴすらずり★(プロフ) - チデンさん» ありがとうございます！！！泣そのコメントが心の支えになります泣これからながくなりそうですがよろしくお願いいたします！！！！ (2019年2月6日 20時) (レス) id: 9f6d511478 (このIDを非表示/違反報告)
チデン - 更新頑張ってください！応援してます！ (2019年2月6日 19時) (レス) id: 7411494241 (このIDを非表示/違反報告)
らぴすらずり★(プロフ) - (^^)さん» あああ、ありがとうございます！！泣なかなかコメントがこなくて実は困ってました(笑)本当にご協力ありがとうございます…！面白いだなんて…！最高の誉め言葉です！今のところあんまりキャラが出てなくてすみません(´;ω;｀)これから更新頑張っていきますね！(^^♪ (2019年1月26日 16時) (レス) id: dde58539fe (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：らぴすらずり★ | 作成日時：2018年12月29日 0時
