ぬいぐるみを拾った話 (br) 1 ページ27
その子を見つけたのは仕事の帰り道だった。
雨の降る中自宅への道のりを歩いていた時、ふと視線を落とした私の目に入ったのは小さなぬいぐるみだった。
『誰か落としちゃったのかなぁ』
拾い上げるとそれは赤いパーカーを着たくまのぬいぐるみで、雨に曝されていたせいか汚れてしまっていた。
『ここにいたらもっと汚れちゃうよね…』
ここに置いていくのも可哀想だと思いハンカチに包んでうちへと連れて帰ることにした。
明日交番に届けに行こう。
『ただいまぁ』
誰かがいるわけでもないのについ言ってしまうのはまだ一人暮らしに慣れてないせいなのかな。
『うーん、どうしよう…。随分汚れちゃってるし…綺麗にしてあげたほうがいいかなぁ』
雨を吸って重くなり黒く汚れているのを見るとそのままにしておけずお風呂場に連れて行く。
『かゆいとこはないですかーなんて』
桶にいれて優しく手洗いするとどんどん水が黒く染まっていき、それと対称にぬいぐるみは綺麗になっていった。
綺麗になったその子をタオルでぎゅっとしてドライヤーで乾かしていく。
『うん、ちゃんと汚れが落ちて良かったぁ。可愛い子だね』
きっと持ち主の人もこんな可愛い子を失くして悲しんでるに違いない。
『早くおうちに帰れるといいね』
今日はうちでゆっくりとおやすみ、なんてぬいぐるみに話し掛ける痛い人になりながら私も眠りについた。
「それではこちらお預かりします。ご協力ありがとうございました」
『はい、よろしくお願いします』
次の日、仕事に行く前に交番で昨日のぬいぐるみを届ける。
早く持ち主が見つかるといいなと祈りながら私は仕事に向かった。
『あー疲れたー』
今日は少し仕事が忙しく、くたくたの体で家に帰る。
夜ご飯何にしようかな、なんて考えながら家の前に着くと目に入ったものに私は息を呑んだ。
『な、んで…』
絞り出すように出た声は震えていたと思う。
だってそこにいたのは今日交番に届けたはずのぬいぐるみだったんだから。
『なにこれ…っ、なんなの…っ』
ゾッとするような出来事に軽くパニックになりながらもその子を拾い私は外に走り出した。
着いた場所は昨日このぬいぐるみを拾った場所。
『おねがい…もううちにこないで…っ』
恐怖で泣きそうになりながらも懇願するようにその子を置いて私は家へと駆け足で帰った。
ぬいぐるみを拾った話 (br) 2→←あの日の君はもういない (sm) 2
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らぴこ(プロフ) - あばばさん» コメントありがとうございます。DMのほう下さるとわかりやすいので助かります。 (2021年9月27日 17時) (
レス) id: 6e7b1fa964 (このIDを非表示/違反報告)
あばば - すごく好みのお話ばかりで毎回の更新が凄く楽しみです...!!Twitterもフォローしたいのですが、申請前にDMなど一度送った方がいいですか...? (2021年9月26日 22時) (レス) id: 79d8c23e11 (このIDを非表示/違反報告)
らぴこ(プロフ) - のんさん» ありがとうございます。元ネタなどは特にはないんです。 (2021年7月18日 17時) (レス) id: 6e7b1fa964 (このIDを非表示/違反報告)
のん - 凄いよく出来ているお話ですね､､､！何かの曲パロですか？ (2021年7月18日 15時) (レス) id: 73f49162b7 (このIDを非表示/違反報告)
らぴこ(プロフ) - なのもちさん» ありがとうございます。のんびりと気が向いた時に更新していこうと思ってますのでよかったら暇な時でも見てくださると幸いです。 (2021年6月29日 11時) (レス) id: 6e7b1fa964 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：らぴこ
| 作成日時：2021年4月8日 0時
