1.記憶 ページ2
side:you
「あーあ。」
「どうした?」
放課後の教室。
大きなため息をついていると、隣に座っていたさとみに声をかけられた。
「いや。冬ってなんも楽しみないなって。」
「そんなん毎年のことじゃん。雪遊びでもすれば?楽しいんじゃね?」
「さとみバカにしすぎ笑」
ほんっと、なんもないなぁ。
10年くらい前のはなし。
地球全体で温暖化が進み深刻となっていた。
資源もほとんど掘りつくされ、人類は生活が困難な状況に陥った。
そこで、どこかの国の政府が言い出したのは「電気を使わないようにしよう」。
夜、人の姿は外で全くと言っていいほど見られなくなった。
テレビやパソコンも使われなくなり、家にも元々それらだったものが転がっている。
でも、10年も前のはなし。
当時、小学生にもなっていなかった私たちは、その頃を覚えていない。
「でもさ、なんかあるよね。」
「ん〜?またその話か?それ会ったときからずっといってる気がするけど」
近所にさとみが引っ越してきたのも、電気が廃止された直後の冬。
温暖化が急にストップしたことで、ここ、東京にも雪が普通に降るようになった。
「だってさ〜、つまんないじゃん。みんな全然笑わないし。」
「お前がどうにか出来ることじゃないだろ?」
「まーそうだけど!でも私、覚えてるんだよね。」
「何を?」
「あれ?言ってなかったっけ。プレゼント。毎年、冬に、誰かに、もらってた。」
「親にもらったんじゃねーの?誕生日だったとか?」
「は?私の誕生日6月ですけど?
…まあ、親だったのかもしれないけど。嬉しかったんだよね。最後の年。大切なもの、くれたんだ。」
「大切な…もの?」
「うん。あ、さとみ見たい?ダメですよーだ」
「俺見たいなんて言ってないけど」
「え〜?しょうがないなぁ。あたしに協力してくれるなら見せてならないこともないけど。」
「考えとくわ笑ほら、帰るぞ。暗くなっちまう前に。」
さとみに半ば引きずられるような形で、徒歩15分の家路を歩いた。
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作者名:らぴらず | 作成日時:2018年12月14日 19時