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「何で?そんなの決まってんだろ"みっくん"?…あんたが▼▼先生の落とし子だから———
F「お断りします。」
声が聞こえた途端、ふっと雨音が途切れた。
肩が強く引っ張られる。引き寄せられて、藤ヶ谷の胸に背中が当たった。濡れた服越しに速い鼓動が聞こえてくる。
F「…遅くなってごめん。」
なんで謝るんだろう
見上げながら頭を振ると、優しく笑みを向けられて
力の抜けた手から札束入りの封筒を抜き取られた。
F「コレ、お返ししますね。悪いけどあなた方の何倍も稼いでるし…俺達、自分のことならもう自分で守れますから。」
それから俺を背中に隠した藤ヶ谷は呆然と立ち尽くしている男女に近付くと、封筒を男の胸に押し付けてその顔面にスマホの画面を突き出した。
———「なぁ…なぁ?分かってくれよ"みっくん"。若い頃からうちで大事に、大事に育ててきた作家なんだよ。」
———「記事を取り下げてくれるなら今後一切、手は出さない。取り下げないなら…コイツらもお前と同じ運命、かもな。」
———「何で?そんなの決まってんだろ"みっくん"?…あんたが▼▼先生の落とし子だから
F「ふふふ。よく撮れたなぁ。日頃の自撮り練習のお陰?あっ、この動画もその北山の記事?ってやつと同時に拡散させとくんで、よろしくお願いしまーす。」
まさか、今の一部始終を全部撮ってて…だから助けるのが"遅くなってごめん"って?「事務所にも送っちゃったんでスマホ奪っても無駄ですから」ってヒラヒラ手なんか振っちゃって…一体どこで、誰にこんなプロの記者みたいなこと教わったんだろう。
F「北山。もう行こ?」
Ki「…っぁ、待っ———
振り返ったと思えばそのまま手首を掴まれる。「びしょ濡れじゃタクシーも電車も乗れないね?」って笑いながら街中へ連れ出された。こんな風に、手を繋いだまま人通りに出るなんて
ほら
行き交う人達が不思議そうに立ち止まる。
「見てあの子達、傘も刺さずに…」
「ねぇあの背の高い方、×××の藤ヶ谷君に似てない?」
なのに藤ヶ谷はお構いなしに
俺の手に指を絡ませなおして、人の波を縫うように進む。
「…別人かな?」
「恋人繋ぎしてるもんね、しかも男の子同士で。」
かわいいね
ひそひそ声が聞こえてきて顔が熱くなった。もう寒いのか熱いのか身も心もぐちゃぐちゃだったけど
…泣きそうなくらい嬉しかった。
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チカ(プロフ) - yuhiさん» お心に届いたことはもちろんですが、何よりも此方こそありがとうー‼︎とyuhi様に直接伝えられることが私は嬉しいです。頂いた感想、大切にします✨(長くなってしまいごめんなさい!) (6月2日 10時) (レス) id: 9d92aa5462 (このIDを非表示/違反報告)
チカ(プロフ) - yuhiさん» はじめまして。アカウントまで作ってこちらに来てくださったのですね…!ミステリと恋愛が絡んだ小説やドラマが大好きで、二次創作でもそれができないかしら…と意識して出来たのが本作でした。なので、yuhi様のお言葉全てがとてもとても嬉しく拝読いたしました。 (6月2日 10時) (レス) id: 9d92aa5462 (このIDを非表示/違反報告)
yuhi(プロフ) - はじめまして。今回はじめて作者様の作品を読ませていただき、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けたことをどうしてもお伝えしたく、アカウントを作ってしまいました。。作者様の書くお話の点と点の繋がり方、心情描写、緩急のある文章に一目惚れです ; ; (6月2日 2時) (レス) id: e183ae6b77 (このIDを非表示/違反報告)
チカ(プロフ) - 雪さん» いやいやこちらこそ!覚えていてくださってありがとうございます、!私の書く藤北さんはそう言ってくださる雪様、読んでくださる方がいてこそ生きられるので…(私こそ語彙力が、汗)これからももっと頑張りたいと思います✨ (2023年3月27日 23時) (レス) id: 9d92aa5462 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - それを上回る作品が次々生まれて本当に凄いなぁの一言です(すみません語彙力無くて)これからもチカさんの世界にトリップするのを楽しみにしています! (2023年3月27日 22時) (レス) id: 64ae229e91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チカ | 作成日時:2023年3月8日 16時