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F-side
T「あれ"みっくん"じゃん。久しぶりー」
作ったような明るい声に場の空気が凍る。
北山を見てにこにこしているようで、その目は「連れてくんなって言ったよね?」と冷ややかに語っていた。
T「なに。みんなどうしたの?」
玉森は、信用していない人間の前で素を出さなくなる。最近はマネージャーやメンバーに対してもこんな感じで
バラエティーなんかは"仲がいいフリ"でうまく回るけど、
歌やダンスパフォーマンスには支障が生じる。ファンの子達はそれを敏感に感じとるだろうし、もうすぐ始まるツアーはどうするのかと焦りは募るばかりだった。
Ki「藤ヶ谷大丈夫、俺が解決するから。」
T「ふふ。解決?なんのこと…」
きゅっと一瞬だけ俺の指を握り、北山がふわりと笑う。そして意を決したように皆にイヤフォンを差し出すと、タブレットで何やら音声を再生しはじめた。
ザザ——…と雑音が流れ、
それから少しずつ鮮明な人の声が聞こえてくる。
『ザー…ええ。…ええ、評判いいでしょう。ザ、…これからも×××の……抜きますんで、弾んでくださいよ。…』
M「俺達のグループ名が聞こえた。」
F「これ、まさか…
こくりと頷いた北山はタクシーのドライブレコーダーのデータから記者の車を割り出したこと、車に盗聴器を仕込んできたことを説明した。
「じゃ、藤ヶ谷。そろそろ時間だから。」
マネージャーから声がかかると、彼らが待機する部屋を出て仕事のためにテレビ局へ向かう準備をする。今日は北山の指示でマネージャーも付き添わせずに予め呼んでおいたタクシーを使って行って帰ってくることになっていた。
Ki「…気を付けて。」
F「ん、こっちのセリフ。またどうなったか教えて?」
事務所の出口まで見送りに来た北山を
誰も見ていないのをいいことに、そっと抱き締める。
Ki「ちょ…まだ解決してないのに。」
F「『まだ』ってことは全部終わったらいいんだ?」
かわいい
返す言葉に惑う、北山の透明な肌に指を滑らせるとくすぐったそうに目を細めた。そっとキスを落とそうとすれば、時間だからと押し返されてしまった。
T「っ…ごめん。ごめん、ガヤ。俺、みっくんのことすごい勘違いしてたのかな。」
彼の指示通りにできるだけ寄り道をしながら仕事に行って戻ってきたとき
泣きながら謝る玉森と慰めるメンバー達
そして
換金されていない一千万の小切手を残したまま
北山は居なくなっていた。
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チカ(プロフ) - yuhiさん» お心に届いたことはもちろんですが、何よりも此方こそありがとうー‼︎とyuhi様に直接伝えられることが私は嬉しいです。頂いた感想、大切にします✨(長くなってしまいごめんなさい!) (6月2日 10時) (レス) id: 9d92aa5462 (このIDを非表示/違反報告)
チカ(プロフ) - yuhiさん» はじめまして。アカウントまで作ってこちらに来てくださったのですね…!ミステリと恋愛が絡んだ小説やドラマが大好きで、二次創作でもそれができないかしら…と意識して出来たのが本作でした。なので、yuhi様のお言葉全てがとてもとても嬉しく拝読いたしました。 (6月2日 10時) (レス) id: 9d92aa5462 (このIDを非表示/違反報告)
yuhi(プロフ) - はじめまして。今回はじめて作者様の作品を読ませていただき、頭を鈍器で殴られたような衝撃を受けたことをどうしてもお伝えしたく、アカウントを作ってしまいました。。作者様の書くお話の点と点の繋がり方、心情描写、緩急のある文章に一目惚れです ; ; (6月2日 2時) (レス) id: e183ae6b77 (このIDを非表示/違反報告)
チカ(プロフ) - 雪さん» いやいやこちらこそ!覚えていてくださってありがとうございます、!私の書く藤北さんはそう言ってくださる雪様、読んでくださる方がいてこそ生きられるので…(私こそ語彙力が、汗)これからももっと頑張りたいと思います✨ (2023年3月27日 23時) (レス) id: 9d92aa5462 (このIDを非表示/違反報告)
雪(プロフ) - それを上回る作品が次々生まれて本当に凄いなぁの一言です(すみません語彙力無くて)これからもチカさんの世界にトリップするのを楽しみにしています! (2023年3月27日 22時) (レス) id: 64ae229e91 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チカ | 作成日時:2023年3月8日 16時