Goss!p

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Ki「でも、ふとしたときに思うの。俺の仕事も似たようなもんだってね。」



コレ見たでしょ？って北山がスマホを差し出せば、そこには…

F「何…コレ。」『藤ヶ谷 'グループ解散'に言及「よく休んで」』
また覚えのないネットニュースのタイトルに、思わず二度見してしまった。



Ki「"釣り"だよ。釣りタイトル」



「お前エゴサとかしないタイプ？」と、北山が肩をすくめる。よくよく読んでみれば俺のファンが"イチゴ"騒動で向こうのグループの解散に安堵していることが載ってるだけ。

「長時間の撮影で疲れてるだろうに、相手役のせいでスキャンダル…大変だったと思う。」
「藤ヶ谷さんよく休んで」

とSNSで呟いていた、だって。それっぽいタイトルの癖に俺のグループが解散するとは一言も書いてない。



F「北山がこれを？」

Ki「いや、…後輩。でも俺も止めなかったし。」



あの鞄屋と同じ
その方がみんなの興味を引けて、雑誌も売れるからねって自嘲する。



Ki「流石に、さ…本人前にしたら気まずいね。こういうのって、お前にもファンにも失礼じゃん。」

F「……。」

Ki「自覚はあるのよ。下手したらパパラッチなんて詐欺師より汚い仕事(クズ)。言葉巧みに相手を釣って、目的のためならその気持ちさえ踏み躙(にじ)る、ゴキブリ以下なのよ…んふふ。」



じゃあどうしてこの仕事を選んだのだろう
素直な疑問が浮かんだけど、言葉にならなかった。



F「北山。ここにしない？」

Ki「え？でも、」



よく接待で使われる"芸能人御用達"なお店じゃなくて
いかにもチェーンと分かる飲屋に戸惑う北山。
もっと良いとこ知ってるよ？と言いたげな顔で此方を見る。

けど、
今日はここが良い。



Ki「…ふぅん、いーよ。」



慌ただしく、力強く東京砂漠を生き抜くサラリーマン達の誰もが密かに抱えている闇。

政治家や芸能人のゴシップを話のネタにして
安くて美味い肴とビールで流す。

仕事にくたびれた閉鎖感漂う世の中に蜜を垂らし
彼らのガス抜きをするのは誰か？



最初は成り行きで今の事務所のオーディションを受けたら、さっさと落ちるはずが運良く合格してしまって
無我夢中で仕事して

ファンの肯定的な反応に、やり甲斐(がい)なんかも見つけながら今日までやってきた俺がこの仕事にプライドがあるように

北山にもきっと理由があるから
辞めたいと思わないの？なんて
とても失礼な気がして訊(き)けなかったから。

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